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10 各論5:体温(感染・免疫):⑦消炎鎮痛剤(1)

2023年5月3日

ワクチンをはじめ、

体内に入り込んだ異物を退治するのは白血球の役目。

そして白血球は仲間を集めるために

各種のシグナルや炎症物質を作ります。

炎症物質ができると…「炎症」発生ですね。

炎症自体は、異物処理のために役立つものですが。

やはり痛いのは困ります。

そこで、消炎鎮痛剤のおはなしになるのです。

 

一番強い消炎(抗炎症)剤はステロイド薬。

これについては

内分泌系の副腎パートでおはなししました。

ここではステロイドではない消炎鎮痛剤

(非ステロイド系消炎鎮痛剤:NSAIDs)を紹介します。

 

NSAIDsは主に炎症物質プロスタグランジンを作る酵素

(シクロオキシゲナーゼ:COX)を邪魔する薬。

アセチルサリチル酸(アスピリン)からスタートしましょう。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051357

アセチルサリチル酸はシクロオキシゲナーゼを邪魔して

プロスタグランジンを作らせません。

プロスタグランジンが出てこないので、炎症が起こりません。

これが「炎症が消えた!(消炎)」ですね。

さらに末梢神経の痛みを感じ取る活性を抑えつつ、

中枢の痛み担当も抑制します。

「痛くなくなった!(鎮痛)」です。

また末梢血管を広げるので、

体温(体熱)が外に逃げやすくなります。

「熱が下がった!(解熱)」ですね。

 

このように便利なアセチルサリチル酸ですが…禁忌は多いですよ。

重い肝臓・腎臓・心臓障害や血液異常のある人。

消化管潰瘍やアスピリン喘息のある人、

予定日12週以内の妊婦も禁忌です。

 

注意が必要なのが血液異常と予定日12週以内の妊婦。

禁忌の欄には「血小板機能障害」としか書いてありませんが、

慎重投与の欄を見ると手術や心臓カテーテル検査、

さらには抜歯前1週間以内の人も含まれてきます。

出血時に出血延長の恐れがあるためですね。

同様にアルコールをいつも飲んでいる人も、

慎重投与欄では出血延長可能性に含まれてきますよ。

妊娠中のアセチルサリチル酸使用は、

動物実験で異常出血と催奇形性、

胎児の動脈管収縮が報告されています。

動脈管は出生して、肺に空気が入ったら閉まるもの。

不必要に早く閉まってしまうと、

全身(特に脳)で酸素不十分になる恐れがあります。

また、プロスタグランジンが抑制されますから、

子宮収縮抑制や妊娠期間延長が起こる可能性がありますね。

乳汁に移行してしまうので、出産後(の授乳)も禁忌ですよ。

 

次回、アセチルサリチル酸の併用注意を見ていきましょう。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20230503更新)