8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(1)腎臓と尿(10)
(3)尿路感染症
先程前立腺肥大症のところで
「尿路感染症」という言葉が出てきました。
尿が体外に正しく排出されているなら、
尿の流れは一方通行である以上、
尿路に感染源が入り込んでも
押し流してくれるはずです。
でも流しきれないほどの感染源が入り込んできたら、
尿路で感染が起きてしまいます。
それが単純性尿路感染症です。
原因は、主に大腸菌。
女性では体の構造上、
大腸の出口「肛門」と尿道口が近くにあります。
「用を足したら前から後ろに拭きましょう。
逆に拭いてはダメですよ」の理由は、
大腸菌の尿路侵入を防ぐためですね。
急に頻尿や排尿時痛が出てきますので、
菌に合った抗菌薬を使うことになります。
水分をしっかりとって、
原因菌を早く押し流してしまいましょう。
特に女性では尿道口と膀胱の位置が近いせいで、
尿道・膀胱で感染が起こりやすいだけではなく。
さらに上流の腎臓(腎盂)まで感染が広がる可能性があります。
それが急性腎盂腎炎。
病原性の高い大腸菌が原因になることが多いですね。
頻尿・排尿時痛に加えて、発熱も見られます。
女性に多いのは言うまでもありませんが、
男性でもパートナー膣内の原因菌や、
同性間性行為で発症可能性があります。
こちらも、原因菌に合った薬で対処ですね。
尿路感染で忘れてはいけないのが、
カテーテルの存在です。
外科的処置や緊急時の尿体外排出等で
よく用いられるカテーテルですが、
尿路にとってはただの「異物」です。
長時間留め置く(留置)ことは、
立派な感染原因になります。
可能な限り、
カテーテルは早く抜去できるようにしていきましょう。
本人に指導・教育をすることで、
間欠的自己導尿(必要なときだけ、
自分でカテーテルを入れる)ができるといいですね。
重大状態の持続や本人の意識レベルが低い等、
どうしても留置しなければいけないこともあります。
そんなときには
「感染経路になりうる!なったら大変!」の
意識を忘れてはいけませんよ!
【あとがき】
以上、通路障害として
「出ていかない!困った!」おはなしでした。
一方で「いつも出てくる!コントロールできない!」も、
困った状態ですね。
出ないこともコントロールできないことも、
どちらも「排尿障害」です。
この排尿障害は、
骨盤の下の筋肉群(骨盤底筋群)と結構関係があります。
だから「尿の排出」のおはなしですが、
次回の下部消化器系(水に溶けないものの排出)の
ところでおはなししましょう。
同様に排尿障害の一因ですが、性感染症概論についても
生殖器系と関連させたいので次回にまわしますよ。