8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(2)大腸(1)
【イントロダクション】
下部消化器系のおはなし、
ここからは「水に溶けないもの(便)」の排出についてです。
便排出の主役は大腸。
そして便の排出と関係が深いのが、
骨盤の下にある骨盤底筋群。
その筋群の直上にあるのが、女性生殖器系ですね。
男性生殖器系の大部分は腹腔外にありますが、
発生の途中までは腹腔内にいましたよ。
今回は下部消化器系の大腸のおはなし。
次回、生殖器系のおはなしに入っていきましょう。
大腸は、小腸の後半部分(回腸)とつながっています。
回腸との結合部は盲腸で(ここが回盲部!)、
そこの下には小さな袋「虫垂」がぶら下がっています。
盲腸から上に向かうのが上行結腸、
臍(へそ)の高さで横(右から左)に向かうのが横行結腸。
下に向かうのが下行結腸で、
S字のようにカーブしているのがS状結腸です。
名称が腸の走行そのものですから、難しくありませんね。
S状結腸は直腸につながり、出口にあたるのが肛門です。
肛門から便を出すことができれば、
水に溶けない不要物の体外排出完了です。
これでまた新しい食べ物を体に入れることができますね。
大腸全体の役目は、水分吸収の仕上げと便の体外排出。
ここがおかしくなると、「水分吸収」と
「便を体の外に出すこと」に悪影響が出ますよ。
「大腸がおかしい」にもいろいろな種類があります。
イメージしやすい「痛い!」の主原因、炎症から始めます。
1 炎症
(1)虫垂炎
場所が特定されていて分かりやすい炎症が虫垂炎。
いわゆる「盲腸!」ですね。
急に激しい腹痛を起こす「急性腹症」のうち、
最も頻度が高いものです。
特徴的な症状は悪心・嘔吐から始まり、
中心部から右下腹部にわたる疼痛と発熱が出ます。
このとき押すと痛い(圧痛点)のが、マックバーニー点。
右の前腸骨の出っ張り(骨棘)と
臍を結んだ線の、外側1/3の点です。
同時に腹膜刺激症状と呼ばれる
反動痛(押した手を急に離すと腹部全体に響く)や、
筋性防御(腹壁全体が硬く板のようになる)も出ますよ。
ただ、これらの症状は小児や高齢者だと出にくいので、
気を付けないといけません。
虫垂炎の多くは腸内細菌のせい。
粘膜だけが炎症のカタル性ならまだいいのですが。
全層炎症の蜂巣性や
壊死・穿孔をもたらす壊疽性になってしまったら、
腹膜炎から敗血症コースにつながる一大事です。
だから、原則として虫垂を切除してしまいます。
抗菌剤でおとなしくさせる保存療法では、
再発を起こしてかえって長引く可能性があることを
説明する必要がありそうです。