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8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(3)生殖器系(2)

男性にとって陰茎は

尿道周囲に位置する体外排出ルートの一部であり、

女性の膣に精子を送り込む生殖器系の一部でもあります。

そんな陰茎に腫瘍(がん)ができることがあります。

陰茎がんは扁平上皮由来の、50~60代に多いがん。

出血や疼痛が見られ、リンパ経由で転移も見られます。

手術になることも、化学療法を選択することもありますが、

立位排尿不能や性交障害が出ることも。

症状が出たら、すぐに診察を受けた方がいいですね。

 

精巣にも腫瘍はできますよ。

数自体は多くありませんが、

好発年齢が15~35歳と若いのが特徴です。

転移によって死亡する可能性はありますが、

約8割は「治るがん」です。

痛みのない「腫大」が多く、

触ると硬さ(硬結)を感じることもあります。

腫れたせいで周りを押して、悪影響を出すこともありますよ。

炎症や転移では、

圧痛、静脈血栓症や水腎症が起こりえます。

進行度合いに合わせて、

手術や化学療法が選択されます。

ただ、数年内に反対側に再発する可能性がありますので、

ちゃんと定期検診を受けましょう。

 

精巣の異常で起こりうるものに、

男性不妊症があります。

一応、不妊症自体は

「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、

(2年以上の)ある一定期間内に、

避妊なく性生活を過ごしても

妊娠の成立を見ない場合」とされています。

 

原因は、

「造精機能障害」「精路通過障害」「性機能障害」の

大きく3つに分けられます。

 

「造精機能障害」は、

脱出途中の停留精巣やホルモン異常、

放射線や薬の影響等で生じます。

男性不妊症原因の2~4割を占める

精索静脈瘤もここに入りますね。

精索静脈瘤は手術対象で、体外受精がとられることもあります。

 

「精路通過障害」は、炎症や閉塞等で生じます。

近隣領域の手術で閉塞が起こることもあるので、

手術で精路を開通させることになりますね。

 

「性機能障害」に含まれるのが、

勃起障害(ED)と射精障害。

勃起障害は「満足な性行為を行うのに

十分な勃起を得られないか、維持できない状態」ですね。

血管や神経のせい(器質性)、心因性(機能性)、

加齢のような自然なものから

外傷・手術といった外的要因や

糖尿病や腎症といった

内的要因の混合・不確定(混合性)などが原因です。

器質性には結構再建術等の手術、心因性には心理療法等

原因が分かる範囲でそれに応じた治療が行われます。

 

薬物療法の一例として、バイアグラがありますね。

これは勃起のメカニズム確認にちょうどいいので、

少し説明。

勃起は、陰茎を通る血管平滑筋がゆるみ(弛緩し)、

多量の血液が海綿体に流れ込むことで生じます。

平滑筋を弛緩させる命令を伝えるメッセンジャーは、

命令を一度届けたら酵素で分解されるのが通常です。

バイアグラは、

この「メッセンジャー分解酵素」を邪魔する薬。

分解されなかったメッセンジャーは、弛緩命令を伝え続けます。

だから血液は海綿体に流れ込み続けて、

勃起を維持できるのです。

でも、本来全身をめぐるはずだった血液が

持続して陰茎に流れ込む結果、

「今、全身に酸素を届けている血液」は

減ってしまっていますね。

バイアグラでめまいや低血圧が起こるのは、

頭に向かうはずの血液までもが

陰茎に向かってしまったからです。