8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(3)生殖器系(6)
乳腺症と似て非なるものが「乳がん」。
罹患率は女性1位、
死亡者数は大腸・肺・胃・膵臓に次ぐ女性5位のがんです。
主に乳管がんで、
がんに栄養を届けるための新生血管を作りつつ、
そのルートから骨・肺・肝臓へと
どんどん全身転移していきます。
それゆえ、以前は無条件乳房全部摘出でした。
だけど、今では見張り役リンパ節(センチネルリンパ節)に
転移があるか等をチェックして、
局所摘出手術可能な例も出てきましたね。
放射線療法や化学療法も併用されます。
再発等チェックのため定期検診は必要ですが、
同じくらい必要なのが心のケアです。
リハビリと同時進行しつつ、再建術や
下着に入れる人工乳房等の情報も提供してくださいね。
腫瘍には「乳腺繊維腫瘍」と「葉状腫瘍」もあります。
乳腺繊維腫瘍は、一番頻度の高い良性腫瘍(しこり)です。
10代後半から出始め、経過観察でオーケーですから、
ちゃんと確定診断を付けてもらってください。
一方の葉状腫瘍も乳腺発生ですが、
良性と悪性があります。
悪性のときの転移先は肺で、
あまり薬の効かない厄介なタイプ。
しかも再発して悪化していく傾向がありますから、
こちらは早期摘出になりますよ。
(2)月経がらみの「変!」
お次に、月経についてのおはなし。
月経は受精卵を受け止めるために
ふかふかにしておいた(肥厚した)子宮内膜が、
一定期間内に受精卵が来なかったためにはがれ落ちるもの。
子宮内膜をはがすきっかけは、
血管のけいれん(攣縮)です。
月経がはじまって数年は周期が不安定ですが、
ホルモン分泌が安定してくると周期も安定してきます。
月経困難症というのは
月経期間内に月経に伴った病的症状が起きる状態。
月経痛、頭痛、イライラ、吐き気、下痢等が生じます。
原因疾患がないものは「機能性月経困難症」。
鎮痛剤による対症療法がメインで、
場合によっては低容量ホルモン剤による
薬物療法も追加されます。
原因疾患があるものは「器質性月経困難症」。
主に原因になるのは女性3大良性疾患とも呼ばれる
「子宮筋腫」「子宮内膜症」「子宮腺筋症」です。
子宮筋腫は、
子宮の外側(子宮平滑筋)からできる良性の腫瘍。
30代以上の女性の、3~5割には1個以上あるといわれます。
下腹部痛や腰痛、月経量増加が見られ、
月経量増加で血の固まり(血塊)が出て、
貧血も出やすいですね。
急に大きくなると周りを圧迫し、
性交痛や頻尿、排尿困難、
尿管圧迫による水腎症の原因にもなります。
周囲圧迫がないなら、対症療法としての薬物療法。
周囲圧迫が始まると手術になりますが…
年齢や本人の妊娠希望等を要相談の上、
子宮全部摘出はできるだけ避ける傾向にあります。