8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(1)腎臓と尿(7)
腎臓の調子が悪くなってしまったとき、
その働きの一部を人工的に行うものが人工透析。
不要物の排出と、ある程度の体内水分調節の代行です。
簡単に中身を説明しますね。
まず、体内から血液を管で連続的に取り出します。
取り出した血液を機械の中で透析膜の管に通し、
その周りを透析液で満たしておきます。
透析膜は「不要なものは通り抜けていくことができ、
血球等は通り抜けないもの」だと思ってください。
血液中の不要なものと水分は、
透析膜の外側にある透析液の中へと入り込んでいきます。
十分に不要物を透析液に移動させた後、
血液を体の中に戻すのですが、
このままでは体に戻る水分が少なくなりすぎです。
だから水分を戻す血液に補充し、
ある程度血液pHを調節してから、血液を体に戻していきます。
やっていること自体は、腎臓(の尿細管)とほぼ同じですね。
でもとても時間がかかります。
1回4~5時間を、
機械のそばで過ごさなくてはなりません。
たくさんの血液を取り出しやすいように、
腕の血管に動脈と静脈の吻合(シャント)を作っても、
この時間が必要です。
いかに腎臓と腎動脈(・腎静脈)が高性能か分かりますね。
しかもこれは2~3日に1回必要です。
さらに通院時間もかかりますから、
通勤・通学にも支障が出てきます。
腕の吻合を維持するために、
荷物の持ち方や寝るときの姿勢まで注意する必要があり、
日常生活がかなり不自由になりますね。
とどめに、腎臓の働きのすべてを
代わりにしてくれるものではありません。
細やかなpH調節やビタミンDの活性化、
エリスロポエチン分泌の代わりは、
他に手段を講じる必要があるのです。
全ての人で可能な手段ではありませんが、
自分の腹膜を透析膜として
就寝中に透析作業を終わらせる腹膜透析もあります。
透析液を腹腔内に入れ、
一定時間後に透析器のポンプで吸い出すことで
不要物排出を終わらせるのです。
自宅かつ就寝中に終わらせることができるので、
これなら日常生活への影響は少なくて済みそうですね。
でも患者さん本人が自分で全部できるように、
入院中に情報提供の上、実践練習が必要になってきます。
残念ながら、5年ほどで
腹膜が透析膜として役に立たなくなってしまいます。
その後は、先程おはなしした
普通の人工透析に通うことになりますね。
C 腎がん
腎臓の働きがおかしくなる理由として、
腎細胞がんもあります。
無症状で見つかるのは、検診で見つかったときぐらい。
食思不振、倦怠感、発熱、貧血、体重減少が出てきて、
いわゆる三兆(血尿、腹痛、腹部腫瘤)が出たら
進行していることがほとんど。
原則として、手術をして腫瘍部を切り取ることになります。
以上「腎臓自体がおかしくなった」おはなしでした。
残りの「通路障害」のおはなしに入りましょう。