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9 呼吸器系のおはなし(2)肺(肺胞)と骨の基本(8)

気胸というのは

肺の外と胸郭の間に空気がたまったもの。

「臓側胸膜と壁側胸膜で囲まれた

胸膜腔の気体貯留」ですね。

そこに空気がたまると、

呼吸筋が胸郭の大きさを変えても、

肺がうまく膨らみません。

肺が膨らまないイコール、

肺胞の中に空気(酸素)が入ってこないということです。

 

原因となる疾患があるのが、二次性気胸。

肺炎は原因ですし、

肺気腫(肺胞の破壊を伴う気腫の拡大)も原因です。

でも、多いのは原因疾患のない原発性気胸。

胸痛と呼吸困難が主症状になります。

左右で同時に起こってしまうと、

呼吸不全を起こして死に至ることも。

初めての発生で軽いものなら、

安静にしていれば治ります。

少し重くなると、

胸郭に空気抜きのチューブを入れて(胸腔穿刺)、

持続的に吸引です。

それでもたまった空気が抜けないと、手術ですね。

再発のときはいきなり手術になる可能性が高いですよ。

部分的に胸膜がくっついて(癒着)、

はがれたときに出血(血気肺)してしまったら、

緊急手術です。

 

胸水は胸郭に貯留した液体のこと。

イメージとしては、

組織液のようなものだと思ってください。

多すぎても、普通ならリンパに流れ込み

問題は起こらないはずなのですが…。

心不全による静脈血圧上昇、

ネフローゼや肝不全による血液中アルブミン不足、

各種炎症による胸膜透過性亢進等の度が過ぎると、

胸水がたまってきます。

胸水がたまると肺が外から圧迫され、

呼吸が浅く、早くなります。

静脈還流障害を起こすと、

気管内に組織液が染み出して咳嗽も出てきますね。

呼吸困難になるだけでなく、

胸水自体にタンパク質が溶け込んでいるため、

血液中タンパク質(アルブミン)が

不足してくることもありえます。

これでは悪化待ったなしです。

一刻も早く胸腔穿刺をして過剰な胸水を抜きましょう。

ドレーンを留置する必要が出てくることもあります。

 

4 呼吸不全

今まで見てきた様々な原因

(と次回おはなしする原因)によって、

うまく呼吸ができない状態が「呼吸不全」。

「動脈血ガスが異常な値を示し、

そのために生体が正常な機能を営めなくなった状態」です。

具体的には動脈血酸素分圧(PaO₂)が

60Torr以下が、呼吸不全。

Torr(トル)は、

水銀柱ミリメートル(mmHg)と同じく圧力の単位です。

とりあえず1Torrは1mmHgでいいですよ。

経皮動脈血酸素飽和度(SpO₂)90以下も、

ほぼ同じ状態です。

1か月以上続くと慢性、そうでなければ急性です。