9 呼吸器系のおはなし(3)骨の異常(4)
D 高齢者の骨折
続いて高齢者の骨折。
こちらは骨粗鬆症と深く関係してきます。
骨粗鬆症というのは、
骨の強度(骨密度と骨質)の低下で
骨折リスクが高まる骨の障害。
加齢(含む閉経)で生じる原発性と、
原因疾患のある続発性に分かれます。
続発性の原因はとても多いのですが…
まずは骨の構造と骨代謝を頭に思い浮かべてください。
先天性の形成不全や、骨折は理由として簡単。
ゴナドトロピン機能不全や甲状腺機能亢進、
クッシング症候群等の内分泌系や、
ビタミン(A、D、C)やミネラル(Ca)、
タンパク質等の栄養性も、骨代謝で理解できますね。
ヘパリン、コルチコステロイド、
メトトレキサート等による薬剤性、
糖尿病、関節リウマチ、肝疾患や
宇宙旅行・安静臥床でも骨粗鬆症は起こりえますよ。
原発性骨粗鬆症の大部分を占める閉経は、
女性ホルモン(特に卵胞ホルモン)の分泌が止まること。
その結果骨芽細胞の働きは悪くなり、
破骨細胞の働きが亢進します。
最大骨量自体は、
性(ホルモン)、人種といった遺伝的要素に加え、
運動、カルシウム摂取等の環境的要素も加味して決まります。
骨量が減るだけでは、何も悪いことは起こりません。
でも少しの衝撃で骨折してしまうと、
急に生活の質(QOL)が低下します。
だからそれを予防するために、
運動しつつカルシウムやビタミンDを摂取する生活習慣改善と、
ヒッププロテクター装着を行いつつ、
破骨細胞の働きを邪魔する薬
(ビスフォスフォネート:骨吸収抑制)の併用になります。
高齢者の転倒・骨折は寝たきり原因。
骨折部位で多いのは「大腿骨骨頭・転子部」、
「椎体(圧迫)」、「橈骨遠位端」。
大腿骨の股関節部分と、背骨と、前腕の手首付近ですね。
大腿骨骨頭と転子部をまとめて
「大腿骨近位部骨折」ということもあります。
多くは転倒が原因。
痛みを嫌がり(歩行困難)、
寝たきりの第一歩を踏み出してしまうことになります。
内固定か、人工骨頭置換術の手術になりますね。
手術後は肺炎と肺塞栓に要注意ですよ。
橈骨遠位端骨折も転倒時に手をついたことが原因。
こちらも内固定になることが多いのですが、
指の可動域制限に注意してくださいね。
一度伸展拘縮を起こしてしまうと、
なかなか治りませんよ!
椎体骨折は自重でつぶれてしまう圧迫骨折が特徴。
1か所で起こると、
他のところでも起こるリスクが4倍跳ね上がるといわれます。
進行すると、背中が丸まりすぎてしまい(亀背)、
仰向け(仰臥位)で寝られず、
各所に圧迫・麻痺が生じる危険があります。
ある程度安静にしつつ、
薬も併用してつぶれた部分の骨癒合を促すことになります。
床上安静なら、
静脈血栓塞栓が要注意であることはもう分かりますね。
下肢の自発運動だけではなく、
フットポンプ、弾性ストッキング等の
道具も活用していきましょう。
もちろん、褥瘡予防も忘れてはいけませんね。
夜も最低3時間に1回は体の向きを変えましょう。
さもないと、下になって圧迫されているところが
血流不足でピンチですよ。