4 薬に共通するおはなし(3):薬の働き(7)

ビタミンAの過剰症の例で催奇形性の基本をおはなししました。

薬の催奇形性も、同じことですよ。

 

胎盤を抜ける薬は「脂溶性」または

「水に溶けてイオン化するか、分子量1000以下」でしたね。

 

脂溶性の薬ということで、

脂溶性ホルモンに関係する薬は用心しておいた方がよさそう。

脂溶性ホルモンは、

ヨウ素(ヨード)を使う甲状腺ホルモンとステロイドホルモン。

甲状腺ホルモンのうち

T3(トリヨードチロニン)、T4(チロキシン)。

副腎皮質ホルモンと(胎盤以外から出る)性ホルモンです。

これらのホルモンの働きを思い出すと、

代謝異常に関係する薬、高血圧や抗炎症薬の中には

催奇形性を示すものがあってもおかしくありません。

 

抗炎症薬には、ステロイドに関係しない

NSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤)もあります。

じゃあ、こちらなら妊娠中も使えるか…というと、

残念ながらこちらもダメです。

理由は、プロスタグランジンにあります。

 

プロスタグランジンも、アラキドン酸カスケードで出来る炎症物質。

プロスタグランジンを作る酵素を邪魔すると、

炎症物質ができませんので炎症が治まります。

でもプロスタグランジンが働かないと、

傷があるところに血小板が集まってきません。

出血すると、なかなか止まらなくなってしまいます。

さらにプロスタグランジンに血圧を下げる働きがあります。

一定割合は胎児血に入る前提のプロスタグランジンが足りないと、

胎児の体液が必要以上に多くなり、

胎児心臓の仕事量が増えてしまいます。

このせいで胎児に致死性心不全や心障害が起こる危険があるのです。

とどめにプロスタグランジンには子宮収縮作用もあります。

ここを邪魔されてしまうと、

出産時にうまく子宮が縮んでくれずに、

母子ともに危険な分娩遅延の危険!

 

だから、妊娠中の痛み止めには十分に注意しなくちゃダメ!

普段使っているロキソニンやボルタレン

(市販薬だと「イブ」、「ナロン」、

「バファリン」等の名前がついています)

は使えない、と思ってください。

 

妊娠中に痛み止めが必要なら(必要になりそうなら)、

妊娠中であることを知っている医師に処方してもらってくださいね。

 

あと、気を付けておきたいのは中枢に働くお薬。

精神関係の薬(抗精神病薬、抗不安薬など)には、

広く催奇形性が認められています。

また抗パーキンソン薬や抗てんかん薬、

吐気止めの薬なども催奇形性のあるものがあります。

これらの薬を飲んでいても、妊娠・出産自体は可能です。

でも、安全に妊娠・出産をしたいならば、

薬の変更やの無料の変化など細やかな対策が必要。

少なくとも「できちゃったから産む」なんて

考え方はやめておきましょう。

 

盲点になりがちなのが、

抗血栓薬のワーファリンと抗生物質のテトラサイクリン。

血栓を作りにくいということは、

かさぶたができにくいということ。

かさぶたができないということは、

出血してしまうと止まりにくいということです。

先程NSAIDsでプロスタグランジンができないように

邪魔したときと同様に、出血傾向が怖いですね。

胎児に神経系の異常や軟骨形成不全が出ることもありますよ。

 

抗生物質のおはなしは、

各論の感染症のおはなしとも関係していきます。

これは次回におはなししましょう。