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2 「健康」とは:(2)「よく生きる」ために[補足2]

2019年11月20日

四日市ぜんそくは、四大公害で唯一の「大気汚染」。

四日市市に並ぶ石油コンビナートから出た硫黄酸化物(SOx)が原因ですね。

 

硫黄酸化物が上気道粘膜を刺激した結果、

粘膜浮腫や分泌物亢進を引き起こして、気道が狭くなってしまいます。

これが気管支ぜんそく、慢性気管支炎に代表される「四日市ぜんそく」です。

 

硫黄酸化物自体は、天然の火山ガスにも含まれる刺激臭のもと。

SOxの「x」の部分が1だと一酸化硫黄(SO)、

2だと二酸化硫黄(SO₂)で、3だと三酸化硫黄(SO₃)。

全部まとめて「硫黄酸化物(SOx)」と表すことが多いですね。

 

石油や石炭といった化石燃料を燃やす(燃焼させる)と、

硫黄酸化物が発生し、大気を汚染します。

しかも硫黄酸化物は水に溶けて酸性を示しますので、

酸性雨のもとでもありますね。

これでは「動物としてよく生きる」ことすら害されてしまい、よろしくありません。

 

その前から「ばい煙規制法」はありましたが、

ヒトの健康重要性を軽視したあまりに時代遅れなものだったため、

「大気汚染防止法」という新しい法律を作って、

ヒトをとりまく環境(大気)を守ることにしましたよ。

 

四大公害病ではありませんが、大気汚染物質について少々追加。

硫黄酸化物のように「~x」で表すものに窒素酸化物(NOx)があります。

これは燃料を高温で燃やした(燃焼させた)ことで出てくるもの。

硫黄酸化物のように気道粘膜に刺激を与え、

気管支ぜんそく等を引き起こします。

刺激による炎症は血管にも影響を与える、

呼吸器系のみならず循環器系にも悪い大気汚染ですね。

 

窒素酸化物(NOx)が光(紫外線)を浴びて変化したものが

光化学オキシダント(Ox)。

「光化学スモッグ」とも呼ばれますね。

こちらは呼吸器系ではなく、目の痛みや頭痛・吐気等が出てきます。

 

近年注目されているのが「粒子状物質(PM)」。

固体や液体の各種の粒を全部まとめた呼び名です。

大陸の土ほこりもPM、工場の煙(煤塵:ばいじん)もPM、

ディーゼル車の黒煙もPMです。

呼吸器系に各種の悪影響を与え、がんとの関連性も疑われています。

 

その中でも直径10㎛以下のものを「浮遊粒子状物質(SPM)」、

直径2.5㎛以下のものを「PM2.5」と呼んでいますね。

浮遊粒子状物質もPM2.5も「とても小さな粒」なので、

呼吸器系でも奥の方へ入り込んでいってしまいます。

PM2.5では、肺胞まで到達してしまうサイズです。

これら「とても小さな粒(立派な刺激性異物!)」によって、

呼吸器系の障害(炎症性疾患や悪性新生物等)引き起こされる可能性があります。

 

だから「動物としてよく生きる」ために、

これらの汚染から大気を守る必要があるのですね。

 

日本ではこれらの大事件の反省から

工業・鉱業に対して有害物質の排出規制が行われています。

でも海外では未だ重金属等の排出や各種汚染問題は続いています。

海外旅行(長期滞在)のときは今のおはなしを思い出してくださいね。