6 各論1:脈・血圧(心臓):心筋梗塞・狭心症(2)血管拡張薬(3)
ノルアドレナリンの受容体(受けとめるところ)は、
1つではありません。
そのせいで、薬が少々複雑になりがちです。
簡単に紹介しますね。
α1受容体は血管にあって、
ノルアドレナリンがはまると血管を収縮させます。
α2受容体は神経にあって、
ノルアドレナリンがはまると
ノルアドレナリンの分泌をストップ。
生化学のホルモンで勉強した、
負のフィードバックに関係する受容体です。
β1受容体は心臓にあって、
ノルアドレナリンがはまると心臓の収縮性が向上して、
血圧と心拍数を増加させます。
β2受容体は気管支と末梢血管にあって、
ノルアドレナリンがはまるとどちらも拡張します。
「…4つも?!
しかも血管にα1とβ2があって逆の働き?めんどくさい!」
全くもってそのとおり。
めんどくさいのですが…
交感神経系が担当している
興奮モード(闘争か逃走か)を考えると
どうしても必要な働きなのです。
心臓に関係するのはβ1受容体で、
血管に関係するのはα1とβ2受容体ですね。
まずは血管平滑筋を収縮させるα1受容体を邪魔しましょう。
α1受容体を邪魔する薬には、
α1選択薬のプラゾシン(ミニプレス)があります。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00052809
ミニプレスがα1受容体にはまると
ノルアドレナリンが受容体にはまることができません。
収縮命令が届かない結果、末梢血管は拡張します。
当然ですが、薬が効きだすと血圧が下がります。
姿勢を変えた瞬間に、
起立性低血圧のめまいや失神…が起こるかもしれません。
脱力や、
「血圧が下がりすぎてヤバい!」と感じた交感神経によって
動悸・発汗が出てきたら…
意識喪失を起こす前に横になってもらってください。
使用直後や薬の量を増やしたときには
しばらく自動車運転等を避ける必要がありそうですよ。
血管を広げるβ2受容体だけを刺激・促進するのは難しいらしく。
狭心症の薬としては、
β1受容体を邪魔(β遮断薬)して
心臓の収縮を適度に抑えてもらおうという薬が多いですね。
アセブトロール塩酸塩(アセタノール)と
メトプロロール酒石酸塩(セロケン)は、
β1選択的遮断薬です。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00005102
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051597
心臓の収縮性が上がりすぎないようにすることで、
(血圧を下げて、かつ)
血液不足の心筋が頑張らなくてもいいようにするのですね。
血圧が下がったことによる注意点は、α1遮断薬と同じ。
あと、心臓の収縮に直接影響しますから、
高度徐脈、特定の不整脈、心不全の人には禁忌。
未治療の褐色細胞腫、代謝性アシドーシス、
妊婦や妊娠可能性のある人や授乳中も禁忌になります。
褐色細胞腫は副腎髄質の腫瘍で、
ノルアドレナリンが増えすぎてしまいます。
そのせいで血圧が上がるのですが…
受容体は4種類ありましたね。
β1をふさいで一瞬心臓の負担を和らげても、
α1が動いていますから血圧急上昇の危険があります。
だから
α1受容体をふさぐことから始めなくちゃいけませんね。
だから「未治療(α1受容体をふさいでいない)」のときには
β1選択遮断薬は使われませんよ。
代謝性アシドーシスのときには、
pHが傾いたせいで心臓の筋肉がうまく働けない状態です。
そこで心臓の筋肉の働きをもっと穏やかにしてしまったら…
心臓、止まっちゃうかもしれませんね。
妊婦(と妊娠可能性のある人)と
新生児はじめ小児に対しては
安全性が確立されていません。
しかも乳汁移行が動物実験で確認されていますよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221214更新)