12 血液と免疫のおはなし(5)
高度な生体防御システム、免疫について勉強しています。
そんな免疫系がダウンしてしまう…それが今回のおはなしです。
世の中には、貪食された後もしばらくは生き残るウイルスがあります。
貪食した白血球が好中球なら、すぐに寿命なのであまり問題になりません。
貪食したのがマクロファージのとき、困ったことが起こりえます。
貪食したマクロファージが生き残ったウイルスで感染してしまうのです。
しかも、マクロファージは抗原提示をしますから、
そこからTリンパ球がウイルスに感染してしまう事態が起こりえます。
…Tリンパ球がウイルスに感染するとどうなるか。
Tリンパ球しか、Bリンパ球に抗体産生依頼を出すことはできません。
抗体は以前体の中に入ってきた異物を捕まえておくガードマン。
抗体産生依頼が出ないということは、
異物に対して「異物を食べる」白血球たちが1つ1つ対処することになります。
これ、仕事量急増で異物を食べる白血球たちがパンクしてしまいます。
そのあとは…もう手が付けられません。
この恐怖の状態が、免疫不全状態。
この状態を引き起こすのがヒト免疫不全ウイルス(HIV)です。
生じた状態は後天性免疫不全症候群(AIDS)ですね。
だから、AIDSを発症すると何でもない細菌で肺炎等を起こしてしまいます。
抗体がないから、異物を食べる白血球たちがパンクして…
これが「日和見感染」ですね。
免疫系が働かなくなってしまう理由のもう1つに、
「白血球もどき」ができてしまうことがあります。
「赤血球もどき」は、
エリスロポエチン不足やビタミンB12・葉酸不足のときに確認しましたね。
「白血球もどき」は、造血幹細胞に異常が起きたときにできてしまいます。
ある日突然、造血幹細胞に異常が生じました。
異常な造血幹細胞からできた白血球たちは、
正常な成熟ができず「白血球もどき」ができてしまうのです。
これが白血病です。
見た目からして白血球に見えないときには「急性」、
一見白血球だけど実は「白血球もどき」のときは「慢性」の文字が付きます。
一般用語としての「急性」「慢性」とは使い方が違うことに注意ですよ。
そしてできた白血球たちの見た目がリンパ球に見えるときは「リンパ性」、
それ以外に見えるときは「骨髄性」の文字が付きます。
もちろん血球のおおもとの造血幹細胞の異常ですから、
赤血球や血小板もうまくできません。
赤血球もどきしかできなければ貧血になります。
血小板もどきしかできなければ、傷ができても血が止まりません。
白血病の原因が造血幹細胞にあることさえ理解できれば、
白血球異常以外に貧血・止血異常が起こることも難しくありませんね。
次回は、血小板のおはなしに入ります。