8 各論3:体温(消化器系):肝胆膵(3)胆石
膵炎の原因の1つは、胆石です。
胆石というのは、
胆汁が過度に濃縮された結果、石のような固まりになってしまったもの。
これが胆道に詰まると、炎症の原因になります。
胆汁は肝臓で作られる胆汁酸を含む液体。
胆汁酸は消化酵素ではないものの、
脂質の吸収に欠かせない「ミセル」を作るために必要なもの。
ミセルを作れないと脂質を適当な大きさ(小ささ)に
保てない…というおはなしでした。
胆汁酸自体が、コレステロールと同じグループ(「ステロイド」)に属しています。
大事な誘導脂質の一員ですよ。
胆石にもいくつかの種類があります。
以前はビリルビンが主成分のビリルビン胆石が多かったのですが、
食生活の変化を受けてかなり減少しました。
現在一番多いのはコレステロール胆石。
これらが混ざったものや、表面に硬い殻(石灰化)のできたものもありますね。
胆石が大きくなってしまうと、
外科的処置(手術で取り出す、超音波で砕くなど)が必要です。
「石」になるまえの粒や泥のような状態なら、
お薬で対処できることがありますよ。
胆嚢で胆汁が濃縮されてしまわぬように、
胆嚢収縮に関係する薬の一例がトレピブトン(スパカール)。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054798
胆汁・膵液の分泌は促進させますが、
胆嚢と胆管の内圧を下げて、十二指腸への出口オッディ括約筋を緩めます。
「たくさん作るけど、どんどん外に出しちゃうよ!」
これがトレピブトンの働きですね。
石ができちゃった後の排出にも役立ちます。
胆石はじめ胆嚢と胆管の異常、慢性膵炎の痛みにも効くお薬です。
できてしまった胆石を溶かす薬もありますよ。
ケノデオキシコール酸(チノ)は、コレステロール胆石を溶かします。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00052263
ただし効果があるのは
「表面が石灰化していないコレステロール胆石」だけですよ。
固まりが液体化して流れていくことになるので、
肝臓や胆嚢の一部で詰まりがあったら大変なことになります。
だから、肝臓・胆嚢の閉塞性障害は禁忌。
閉塞していなくとも疾患悪化の可能性があるので、
重篤な肝胆膵障害も禁忌になります。
さらに、妊婦・妊娠可能性のある人も禁忌。
動物実験報告ではありますが、
胎児の肝臓に変化があったことが分かっています。