10 各論5:体温(感染・免疫):⑩がん(悪性腫瘍)(1)
がんに効く薬はDNA複製や分裂そのものを邪魔します。
最初にDNAを作るときに必要な葉酸を邪魔するお薬。
…実はこれがメトトレキサート(メソトレキセート)。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00014253
先ほど出てきた関節リウマチのお薬です。
「ビタミンB12と葉酸がないとDNAを作れない」と生化学でおはなししましたね。
葉酸を働ける形(活性型葉酸)にする酵素の働きを邪魔しています。
禁忌や併用注意は、もう一度目を通しておいてくださいね。
DNAにくっついて複製を邪魔するお薬もあります。
ドキソルビシン塩酸塩が一例です。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058608
DNAにくっついて複合体を作ってしまうため、
DNAを複製するための酵素がくっつけなくなってしまいます。
複製を邪魔する薬は他にもありますよ。
全身性エリテマトーデスで出てきたシクロホスファミド水和物や、
白金製剤(シスプラチンなど)も複製を邪魔するお薬です。
ドキソルビシン塩酸塩の禁忌は薬に過敏症のある人と、心機能に異常のある人。
妊娠・妊娠可能性のある人や授乳中の人も禁忌ですね。
動物実験で催奇形性が報告され、授乳の安全性は確立されていません。
警告文はがんの治療に一般的なものです。
読んでみれば「確かにそうだよね」と思えるものばかり。
そして併用注意には、心毒性のある抗腫瘍薬アントラサイクリン系の名前が。
これは禁忌の「心機能異常」と対応させれば難しくありません。
他の抗腫瘍薬や放射線治療との併用では、
骨髄抑制が強く出てしまう可能性があります。
パクリタキセルの名前が個別に上がっていますが、
これも「他の抗腫瘍薬」の一部ですよ。
「骨髄抑制」の文字を見て、血球の分化をイメージできていますか?
造血幹細胞から赤血球、白血球、血小板ができていく
生化学で勉強したあの図です。
造血幹細胞のいる骨髄の働きが抑制される(邪魔される)ということは、
全ての血球が生まれにくくなるということです。
「だから貧血や免疫能力の低下(免疫抑制)、
出血が止まりにくくなる可能性があるんだね!」と意識していきましょうね。
なお、放射線治療はDNAに直しきれないほどの傷をつけて
DNAを正しく複製できなくします。
正しく複製ができなければ、がん細胞も増えることができませんね。