3 憲法・法律:(3)民法レベル(1)委任関係
憲法には、他にもいろいろな基本的人権が定められています。
男女の性(両性)の本質的平等、職業選択の自由、
健康で文化的な最低限度の生活をおくるための権利などなど。
でも、これらの人権や権利はあまりにも抽象的なもの。
このままでは「理念」で止まってしまいますので…
もう少し具体的な決まりとして文章化しておく必要があります。
その「文章化したもの」が「民法」、「刑法」、
そして行政に関係する法律たちです。
一気に紹介すると、頭が混乱してしまいます。
だから、最初にヒトとヒトの間の決まりとしての「民法」の一部を紹介します。
そのあとで、決まりを破ってヒト(ときにはモノ)を
傷つけてしまったときの「刑法」の一部を紹介。
行政に関係する法律たちはさらにその後…
行政・制度のところで一部紹介していきますよ。
民法は、ヒトとヒトの間の決まりを定めたもの。
看護師はじめ医療職にとっては、
特に患者さんとの関係と、
勤めるところ(勤務先)との関係で問題になるところですね。
まず、看護師含む医療職と患者さんとの関係は「委任関係」とされています。
本来、ヒトは誰に対してもすべて平等の立場にあるはずです。
でも、医療職は分野の違いこそあれ医療の専門家。
医療の基礎知識がない人が情報だけ与えられても、
どう自己決定の材料としていいか分かりません。
例えば勉強した後の皆さんなら、
「血糖値が300?!
うわっ!治療しないと全身がピンチだよ!」とイメージできますが…。
「空腹時血糖の正常値は90~110。あなたは300」とだけ情報を与えられても、
「ああ、正常値より多いのね。ふーん…」と
特に行動を起こすきっかけにならない可能性があるのです。
だからヒトが医療機関にかかるとき、
医療従事者とその人との間には
「自分に対して一番良い結果になるように働いてね、頼むよ!」という
無言の約束が交わされています。
この約束のことを「委任契約」と呼び、
委任契約で生まれる関係が「委任関係」です。
…細かく言うと、法律行為を頼むのが委任、それ以外を頼むことは準委任。
委任と準委任の基本スタイルは無償(ただ)ですが、
「代金を払うよ」と約束したら(有償特約)、
当然代金を支払わないと約束違反になります。
医療関係の委任・準委任については「医療契約」と
1つのスタイルにまとめるのが一般的です。
もちろん、有償特約が付いていますよ。
医療契約は医療従事者が提供する
診察や看護等各種作業の提供(「役務の提供」)と、
その提供に対する代金(「対価の提供」)が、
欠けてはいけない大事なパーツ(要素)になります。
そして医療従事者の提供する各種の作業には
「善良なる管理者(の注意義務)」が求められることになります。
次回、その内容を確認していきましょう。