4 行政・制度:(1)健康保険制度(1)[補足10]
前回、診療報酬による医療機関の誘導(コントロール)を確認しました。
ここで、医療機関の収入と支出を見てみることにしましょう。
医療機関の収入の多くは、
保険診療の「残り7割」に相当する医療保険の支払い。
受療者本人に窓口で支払ってもらう自己負担分は、
原則3割しかありませんでしたね。
他に収入手段がないのかというと…
ところによっては保険医療外の「自由診療」をしていますね。
これなら受療者が10割を払ってくれますが、
「こんなに払うの?!高いよ!」と言われてしまいます。
それでも受療する特殊な内容
(例えば美容整形の施術の一部)なら、
納得して支払ってくれる人もいると思います。
でも、医療機関全体の収入として考えればそれは少数派。
やっぱり、医療機関の収入の多くは医療保険の「残り7割」のようです。
かたや医療機関の支出は約50%を人件費が占めています。
約30%が薬等の消耗品費、
残りは土地や建物、各種レンタル代などですね。
「ん?
前回『7:1看護配置』ってやったけど…
たくさん看護師を雇ったら、人件費で逆に支出が増えちゃわない?」
もしそんなことになったら、医療機関をコントロールできませんね。
だから「一見人件費が高くつくように思えても、
ちゃんと考えれば『7:1看護配置』にした方が収支がプラスになる」額に
診療報酬を定める必要があります。
保険金のストックが有限であることを前提とすると、
結構絶妙なバランスが要求されますよ。
そんな「診療報酬」の決め方を、ごく簡単に紹介しましょう。
担当は、主に厚生労働省。
厚生労働大臣に意見を述べる「社会保障審査会(各領域の専門家)」が、
改正内容の方向性を決めるところです。
先程の例だと、
「入院患者1人当たりの看護師の人数を増やそう!」ですね。
そして内閣(行政担当の合議体)で、改定率を決めます。
財源担当の財務省と、サービス担当の厚生労働省が軸になって
「国全体としての診療報酬に支払う額の増減」を決めるのです。
「サービス改善の必要性が高いから、
診療報酬全体として支払う額を増やしますよ!」だと、
「プラス改訂」になりますね。
改訂率とそのプラスマイナスを受けて、
厚生労働大臣が「中央社会保険医療協議会」に
「改正の具体的内容」を検討するように依頼します。
これまた、各領域専門家の集まりです。
診療報酬を受け取る側、支払う側、中立の立場の人も参加しますよ。
ここで、絶妙なバランスの診療報酬が決まります。
あとは中央社会保険医療協議会が厚生労働大臣に報告し、
厚生労働大臣がそれを発表(告示、通知)。
これで新しくなった(改定された)診療報酬がスタートします。
次回、診療報酬の改定を各種環境変化の視点から見てみましょう。