3 ピルのおはなし(1)
性感染症のおはなしは一段落。
今回からは「ピル(経口避妊薬)」のおはなしです。
ピルの効用は、避妊と、月経困難症の緩和。
ピルにはいろいろな種類がありますが、
基本は「女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を
体の外から入れる」です。
なぜ体の外から女性ホルモンを入れると避妊できるのか。
そこには、女性のホルモン2相性と
体内の変化を理解する必要がありますね。
生化学や生理学でおなじみ、
女性ホルモンの簡単な復習です。
(生化学対応ページ)
https://5948chiri.com/bioc-11-12/
https://5948chiri.com/bioc-11-13/
女性には卵胞ホルモンと黄体ホルモンがあり、
約1か月1サイクルで入れ替わります。
体温が低い低温相は卵子育成モード、
体温が高い高温相は受精卵受け止めモードでした。
この2つのモード切替は、
月経(生理)とLHサージでしたね。
LHは下垂体前葉から出る黄体形成ホルモンのこと。
これが急にドカンと出るのが、LHサージ。
これによってびっくりした卵巣内の卵子が
飛び出るのが「排卵」です。
LHサージの刺激で黄体ホルモンが増え、
その一定期間後に卵胞ホルモンが増えると月経。
これが、ヒトの性周期です。
ここでイメージしてみてください。
LHサージがなくても黄体ホルモンが増えたら、
LHサージは必要ありませんね。
LHサージがなくても、
黄体ホルモンが増えた一定期間後に卵胞ホルモンが増えたら、
LHサージがなくても性周期は維持された状態です。
この卵胞ホルモンや黄体ホルモンは、
体内で作られたものか否かは問いません。
「じゃあ働かなくてもいいか…」と黄体形成ホルモンが思い、
LHサージがなくなると、排卵のきっかけがありません。
排卵がなければ、受精しませんね。
だからピルを飲む(女性ホルモンを体の外から入れる)と、
避妊(妊娠しない)になるのです。
これが、ピルの基本理解です。
このおはなしを始める最初に紹介した
「緊急ピル(モーニングアフターピル)」はちょっと応用。
プロゲステロン(黄体ホルモン)に似たものを、
それなりに多く(中容量)体の中に入れます。
すると排卵前なら、
その後5~7日間は排卵されない状態になります。
女性体内に入った精子はそこまで生きてはいられません。
(生存しても生殖能力は残りません)
これなら、受精しませんから、妊娠しません。
排卵後だと負のフィードバックを受けて
LH(黄体形成ホルモン)の分泌量が減ります。
その結果高温相が短くなり、
受精後の着床に適した状態はあっという間に終わってしまいます。
これも着床しなければ、妊娠にはなりません。
緊急ピル(モーニングアフターピル)の避妊効果は、
一応8割以上とされています。
飲まないよりは安心できますが、
「絶対安心!」ではありませんね。
「絶対安心」したいなら、
普段からピル(低用量ピル)を飲み続けるに限ります。
ただし、前回までおはなししてきたSTDは、
ピルでは防げません。
だから「コンドーム」の必要性は変わりませんよ。