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6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(26)

C型肝炎ウイルス(HCV)は約7割がキャリア化し、

慢性肝炎化します。

約10~30年かけて、3~4割が肝硬変になるコースです。

自覚症状は出ても食欲不振、倦怠感、悪心、嘔吐。

ワクチンはないし、

血液にのって他の臓器にも悪さをする困りものです。

でもHCVにはインターフェロンが効きます。

本来、インターフェロンというのは

ヒトの体が対ウイルス用に作っているもので、

体にとっては「未知の薬」ではありません。

 

でも免疫をヒトレベルで見ると

「困った!」が起こりうることは、勉強してきましたね。

体の外からインターフェロンをたくさん入れると、

インフルエンザにかかったような発熱等が1週間ほど続きます。

さらに血球減少とイライラ・抑うつ等の精神症状が出て、

脱毛や視力低下等も起こりえます、

 

やはり、HCVも予防が一番ですね。

何はなくとも、スタンダードプリコーション。

特にHCVでは性交渉による感染や母子感染はありますが、

あとはあからさまな「血液」感染くらいです。

日常行為で感染可能性があるのは、

出血可能性が高いカミソリや歯ブラシの共用ぐらい。

だからHCV予防は「いつも通り」で十分ですよ!

 

(2)肝硬変・肝がん

炎症の結果、

肝臓が役目を果たせなくなったものが肝硬変。

「著明な線維化と共に、

肝実質の結節形成を示す病変」です。

原因は今までの肝炎に加え、

内分泌系のところでおはなしする代謝異常症も含まれます。

肝不全の兆候は、黄疸、腹水、意識障害、出血傾向。

これらが出たものを「非対償性肝硬変」、

出ていないものが「対償性肝硬変」です。

 

どうしてこんな症状が出るのかは、

肝臓の中で何が起こっているのかを確認すれば分かります。

起こっていることは、肝細胞の壊死、結合組織の新生です。

肝臓細胞等が各種炎症でうまく働けなくなり、

死んでしまう(壊死)と、

周囲が崩れないように結合組織が線維を作り出します。

しかしこの線維化したところは血液の通りが悪くなり、

肝臓に流れ込む門脈の血圧が上がってきます。

門脈圧が上がると、

静脈血は迂回ルートにあたる

食道・腹壁・直腸静脈(側副系)に流れ出します。

腹壁静脈圧が上がって青黒く見えてくるのが、

メドゥーサの頭(腹壁静脈怒張)。

同時に消化管出血(食道静脈瘤・破裂)、

痔核(直腸静脈)の危険でもあります。

門脈圧上昇は腹水の原因にもなりますよ。

しかも腎症を起こして、

血液中のアルブミンが尿へと抜けてしまい

低アルブミン血症になると、

さらに腹水がたまりやすくなります。

こうなるといつ肝腎症候群を起こして

末期昏睡や死に至ってもおかしくありません。