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14 各論8:ウイルス(2)RNAウイルス(11)

J カリシウイルス科

カリシウイルス科、ノロウイルス属のノーウォークウイルスが、

下痢症の原因ウイルス。

「正確にはノーウォークウイルスが下痢の原因。

だけど『属』のレベルの

『ノロウイルス』と呼ばれることがとても多い」

ことを覚えておいてくださいね。

エンベロープがないため、

消毒薬で不活性化されにくいことに要注意です。

 

主に冬に、集団発生することが多い胃腸炎が主症状。

基本は汚染食品や不衛生な手指からの経口感染です。

牡蠣等の二枚貝の中で生体濃縮されてしまうのが汚染食品の代表例。

だから「(生食用の表示がない限り)生食を避ける」ことが大事です。

だけど「ウイルス数10個くらい」からでも

胃腸炎を起こせる感染性の強さから、

嘔吐物を処理した後の床に残ったウイルスが

塵(ちり・ほこり)として舞い上がり口に入る

(「経口感染?!」)ことからも感染しますよ。

 

小腸上皮細胞につくと、

そこで増えて下痢、腹痛、嘔吐、発熱が出てきます。

4日ほどで自然に良くなりますが…

逆にそれぐらい待たないと良くなりません。

嘔吐や下痢で水分とミネラルが体からどんどん出ていきますから、

ちゃんと補水・補液してくださいね。

特に高齢者では要注意です。

 

なお、便には1か月ほどウイルスが排出され続けます。

治まったと思って油断すると、

周囲にウイルスをまき散らすことになります。

医療従事者が感染の媒介者にならないように、

しっかりとスタンダードプリコーション。

消毒にはちゃんと効くものを使ってくださいね。

熱湯(二枚貝の「十分加熱」にも関係します)、

次亜塩素酸ナトリウム、グルタルアルデヒドが効きますが、

使える対象は決まっていました。

ちゃんと総論の「消毒」のところを見直しておいてくださいね。

 

K レオウイルス科

2本鎖RNAで、エンベロープなしの正二十面体がレオウイルス科。

代表はロタウイルスです。

口から入ったロタウイルスが小腸上皮細胞に入り込んで増殖開始。

ウイルスが増えると、

ウイルス表面のウイルスタンパク質(エンテロトキシン:毒素)も

たくさんできます。

すると毒素のせいで小腸上皮細胞の働きが変になって、

水分等をちゃんと吸収できなくなります。

これが下痢の原因ですね。

乳幼児に多く、白色便になることから

「冬季乳幼児白色下痢症」とも呼ばれるのが、

ロタウイルスによる下痢です。

 

発熱付きの胃腸炎症状で終わってくれるといいのですが…。

重症化してしまうと

激しい脱水から命を奪われることもあります。

けいれん等の中枢神経系合併症も良く起こるため、

特に乳児では怖い感染症です。

ウイルスに対する有効治療法がなく、

脱水に対する対症療法でウイルスの体外排出を待つしかありません。

しかも便中には不活性化されにくいウイルスがいっぱいいますから、

これまた院内感染要注意です。

乳児対象に生ワクチン接種がありますので、

可能な限り活用してウイルス感染を防いでください。