5 脳神経系と内分泌系のおはなし(6)
味覚のおはなしの続きです。
味覚とは、いわゆる「五味」のこと…なのですが。
味蕾が電気信号化する刺激のうち、ここでの「五味」とは
甘味・酸味・塩味・苦味・うまみのことです。
日本人だと「ああ、そうね~」で済みそうですが、
他の地域では異論あるところだと思います。
同じアジア圏でも中国では「うまみ」を外して「辛味」が入りますし、
インドでは中国の五味に「渋味」を入れた六味が代表です。
この辺りは地域・文化特性があって楽しいところですから、
興味がある方は自分で調べてみてくださいね。
これら「味覚」を担当するのは味蕾。
舌の粘膜上にいる味蕾が、各種刺激を電気信号に変えてくれます。
味蕾が受ける刺激は、熱い、冷たい、辛い、苦い、酸っぱい、しょっぱい…。
これ、かなりの結構重労働です。
すぐに傷んでしまうため、味蕾は約10日で新品と交換になります。
ここで「へー、10日か~」で終わってはいけませんよ。
少なくとも10日に1回は、細胞分裂が必要だということです。
細胞分裂に必要なものは何でしたっけ?
最低限、ビタミンB12と葉酸はDNAをフルセットコピーするために必要でしたね。
そして細胞膜のために脂質とタンパク質が必要です。
さらには、
味蕾が働くために亜鉛(Zn)を食べ物から吸収しておかないといけません。
これらが、10日に1回、いつも必要になるのです。
しかもビタミンB群は水溶性!
常に尿として体外に出ていってしまうから「食べ貯め」は効きません。
だから、毎日の食生活を大事にする必要があるのです。
お次は嗅覚(匂い)。
食べ物を食べるとき、風邪などで鼻が詰まっているとあまりおいしく感じません。
確かに体調が悪いときには舌の上に舌苔がたまり、
味覚を感じ取りにくくなりますが…原因はそれだけではありませんよ。
嗅覚は、「おいしさ」にかなりの影響を与えます。
私たちは食べ物を味覚だけでなく嗅覚でも「味わって」いるのです。
そんな嗅覚担当は嗅覚上皮細胞(嗅細胞)。
鼻の空間(鼻腔)の天井部分に、約500万個あります。
これらの嗅覚上皮細胞が
約1000種類あるとされる匂いを電気刺激に変えてくれます。
中枢に届けるのは第1脳神経(嗅神経)の役目です。
「どうして視覚が1番じゃないの?嗅覚なんかそこまで使わないよ?」
それは、ヒト基準の考え方ですね。
動物は、嗅覚を最大限に活用して生きてきました。
食べられるものを探す、自分より強い相手の存在を知ったら隠れる、
繁殖に適した相手を探す…全部、嗅覚のお仕事です。
進化の過程で視覚情報を重要視するようになっても、
やっぱり動物の生存にとっては「嗅覚こそ大事!」なのです。
ここは中枢(脳)のところで、もう1度出てくるおはなしですよ。