10 核酸・遺伝子のおはなし(2)
DNAのキーワードは
「丈夫、大事、2枚で1セット」でした。
そして前回
「大事だから使うときにはコピー(RNA)で」と
おはなししましたよね。
今回はDNAとRNAの違いに注目していきますよ。
DNAは、1種類しかありません。
RNAは、3種類あります。
これ、大きな違いですね。
前回出てきたRNAは、そのうちの1つ「mRNA」。
残りは「tRNA」と「rRNA」です。
働きも見ていきましょうね。
mRNAはDNAの情報をコピーしたものでした。
tRNAはその情報をもとに
アミノ酸を運んでくる台車のようなもの。
rRNAはリボソームの中で待機して
タンパク質合成を助けるものです。
「リボソーム?」と思った人は、
ちゃんと「1 細胞とアレルギー」の細胞小器官を復習ですよ。
これらRNAはDNAと比べると
「もろい、使い捨て、1枚」という特徴があります。
いろいろな刺激に対し、RNAは丈夫とはいえません。
RNAを調べようと思ったら、
非常に細かな準備と温度管理が必要です。
でも、DNAはかなり安定…「丈夫」です。
さらに、RNAは設計図上のタンパク質を作るためのもの。
永久保存版となるDNAと比べると…。
多少の傷を気にしてはRNAとして使えません。
もし使って傷が付いたら、
DNAからコピーを取り直せばいいだけのこと。
だから、RNAはもろくて使い捨てでいいのです。
しかも、コピーはとりすぎても収拾がつかなくなってしまいます。
使う分だけでいいので、1枚です。
永久保存版のDNAは「2枚で1セット」になっています。
これ、ちょっと説明が必要ですね。
DNAの2枚1セットの関係は、
写真のネガとポジの関係になっています。
「画像は同じで、色が反対」がネガとポジですね。
細胞分裂をするときにDNAはフルセットコピーされます。
間違いのないようにコピーされますが…
ときには汚れがついたり、
コピー欠けが起きることもあります。
DNAにはそんなときのための
「お直しサービス」があります。
DNAリガーゼとDNAポリメラーゼという酵素が、
ミスコピーを見つけたらそこを切り取り、
「正しい」設計図にしてくれるのです。
そして「正しい」が分かるためには、
基準になるものが必要不可欠。
だから、細胞分裂後には
新しく作ったDNAともとのDNAを2枚1セットにします。
これを「半保存的複製」といいます。
これなら「お直しサービス」も
基準がはっきりしているため、
迷うことなく働くことができますね。
もとのDNAは「正しい」はずですから、
それをもとに新しいDNAを直していけばいいのです。
仮に1枚しかなかったら、
ミスコピーかどうかが分かりません。
欠けがあっても、
どう直していいのか分かりませんね。
2枚あっても、
どちらを基準にしていいかわからなかったら、
やっぱりどう直していいのか分かりません。
だから、DNAは「2枚1セット」で
「半保存的複製」が必要になってくるのです。
ちなみに、ウイルス等ではDNAを使わないものもあります。
もろい1枚設計図ですから…情報は変化しまくりです。
ただ、ウイルスにとっては「変化」は悪いことではありません。
そこについては、後でおはなししますね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220530更新)