10 核酸・遺伝子のおはなし(6)
ここまでで、核酸についての理解が進んだはずです。
もうセントラルドグマの話を始めても大丈夫そうですね。
セントラルドグマ…直訳すると「中央教義」です。
「なあにこれぇ…」ですよね。
でも、そう名付けられてしまった以上仕方ない。
ここで名前と具体的内容を理解してしまいましょう。
セントラルドグマの要点、それは「複製・転写・翻訳」です。
要点の内容説明をしますね。
「複製」というのは細胞分裂をするときに、
DNAをフルセットコピーすることです。
「転写」というのは、
DNAに書いてある設計図をもとにタンパク質を作り出すため、
mRNAに情報を写し取ることです。
「翻訳」というのは、
mRNAの情報をもとにアミノ酸をならべて、
タンパク質の1次構造を作り上げることです。
一度まとめておきますよ。
「複製・転写・翻訳」が、セントラルドグマ。
複製はDNAからDNAをつくること。
転写はDNAからmRNAを作ること。
翻訳はmRNAからタンパク質1次構造を作ることです。
大体のイメージがつかめてきましたか?
それでは、少しずつ各段階を補足していきますよ。
複製はDNAからDNAのフルセットコピー。
これは今まで勉強してきたとおりです。
塩基が決まった相手と手をつないでいくと、
自然と「画像が同じで色が反対」の関係にあ
る設計図が出来上がります。
あとは、DNAお直しサービスを活用するためにも、
細胞1個には古いDNAと新しく作ったDNAを1枚ずつ。
これが『半保存的複製』でしたよね。
転写も、基本的に複製と同じです。
でも、塩基が違います。
アデニン(A)と手をつなぐのはウラシル(U)でした。
ウラシルはRNAだけで使われる塩基でしたね。
さらに、単にコピーするだけではありません。
「使うところだけ」をコピーした後で、
「余白部分を切り取ること」が必要になります。
「使うところだけ」という点で、
フルセットコピーを取る複製とは違いますね。
「使うところだけ」とは、
作りたいタンパク質のところだけ、という意味です。
この段階については、
コピーの開始地点の決め方や
コピー回数の決定などいろいろなお話があります。
ありますが…そこは他の本にお任せします。
今は転写と複製の違いを続けますよ。
「余白部分を切り取る」ことを
専門用語では『スプライシング』といいます。
設計図は普段取り扱いしやすいように
一定のサイズに書かれているとしましょう。
いざ設計図を組み立てようとするとき、
管理用の番号が書いてある部分や、余白部分はいりませんね。
純粋な設計図部分
(遺伝情報がのっている部分)だけにすることが、
スプライシングです。
余白部分等の切り取られる分は『イントロン』、
純粋な設計図部分を『エキソン』と言います。
専門用語でいうと
『DNAの情報を写し取った後、
イントロンを切り取り、
エキソンだけにして
mRNAを完成させるのがスプライシング』ですね。
忘れてはいけないことは、
スプライシングをしないと
mRNAとしては完成しません。
転写は「スプライシングをしてmRNAを作る」ことが
大事ですよ!
【今回の内容が関係するところ】(以下20220530更新)