5 タンパク質のおはなし(5)

酵素の特異性についてのおはなしを始めます。

特異性とは「狙ったものだけを、間違わない」という意味。

糖の消化酵素は、タンパク質を消化しません。

グリコシド結合は切れますが、

アミノ酸とアミノ酸の間の結合(「ペプチド結合」)は切れないのです。

…今、さりげなく大事な結合の名前が出てきました。

タンパク質の結合は、ペプチド結合です。

糖のグリコシド結合のように、とても大事な結合名です。

しっかり覚えてくださいね。

 

この特異性は、決まったものだけに作用するのが基本です。

ちょっと難しい言い方をすると、

「酵素が働く基質は決まっている」といいます。

基質酵素が働く相手のこと。

酵素が働いた結果できたものは反応生成物といいます。

以前勉強したマルトースの例で確認すると…。

『マルターゼという酵素は、マルトースを基質として、

グルコース2個が反応生成物になります。』という文章は、

「マルトースにマルターゼが働くと、グルコースが2個できる」と

言っているのですね。

具体例で考えれば、さほど難しい話でもありませんよ。

 

このように酵素は基質を間違えないのが基本です。

なのですが…あまりに似ていると間違うことがあります。

形は同じで色違い…なんてものがあると、

さすがの酵素も勘違いしてしまいます。

酵素の間違いをうまく利用したものが、薬です。

 

酵素の邪魔の仕方は、大きく3つに分けられます。

「拮抗阻害」「非拮抗阻害」「不拮抗阻害」です。

 

拮抗阻害というのは、先の「色違い」の例ですね。

実際の例としては、ワーファリンとビタミンKが有名。

ビタミンKというのは、血を止める(止血)に関係するビタミン。

本来大事なビタミンですが、

血管内でかさぶたができやすい状態の人には…多すぎは困ります。

そんなときに使われるのがワーファリンというお薬。

ビタミンKに似た形をしているため、

ビタミンKに働くはずの酵素が勘違い。

ワーファリンに酵素がくっついても、血は止まりません。

だから、ワーファリンには血液凝固阻害(血栓防止)効果があるのです。

…でもビタミンK自体の量が増えてしまったら、

ワーファリンに勘違いしてくっつく酵素は減ってしまうので。

ワーファリンを飲んでいるときには、

ビタミンKが多く含まれる納豆は食べちゃいけません。

 

 

非拮抗阻害は酵素にくっついて邪魔をするのですが、

基質がはまるところ以外にくっつくもの。

はさみのグリップの間に物がはさまって切れない…とイメージしてください。

不拮抗阻害は酵素と基質がくっついたあと、

外側から覆ってしまうイメージ。

これだと反応生成物は出ず、酵素は他の基質にくっつくこともできません。

薬の基本は酵素の邪魔。

その土台にあるのは、酵素の特異性ということを理解してくださいね。