8 脂質代謝のおはなし(6)
炎症物質を抑える薬が、消炎鎮痛剤…痛み止めですね。
消炎鎮痛剤の基本は、「酵素を邪魔すること」です。
前回出てきたシクロオキシゲナーゼや
リポキシゲナーゼを「邪魔」ですね。
邪魔の仕方はいろいろあるので、ここでは深入りしませんよ。
気になる人は「5 タンパク質」を見てくださいね。
例えば、シクロオキシゲナーゼを邪魔するお薬。
アスピリンやインドメタシンがここに含まれます。
ロキソプロフェンもここに入りますね。
頭痛や歯痛にアスピリン、筋肉痛にインドメタシン。
ロキソプロフェンは、商品名「ロキソニン」のことですよ。
もっと痛みのもとに効くものもあります。
コルチコステロイドです。
これは、アラキドン酸が
中性脂肪から切り離されるところを邪魔するもの。
アラキドン酸が出ないから、炎症物質ができない。
シンプルかつ、強力な消炎鎮痛効果です。
アラキドン酸を切り離すところの酵素がホスホリパーゼ。
コルチコステロイドがたくさん作らせるタンパク質が、
ホスホリパーゼを「邪魔」します。
こちらのコルチコステロイド、名前の通りステロイドの一員。
ホルモンの1つ、
副腎皮質から出る糖質コルチコイドのことです。
糖質コルチコイド
(の呼び名の1つがコルチコステロイド)に似た形の薬が、
いわゆる「ステロイド剤」です。
…つまり、体の中にある消炎鎮痛のホルモンに似せた形が、
「ステロイド剤」という強い薬ってことだね?
そうです。
炎症は消えますが、使い方がちょっと難しい薬です。
炎症が治まった!といって自分勝手に使用をやめると、
すぐにぶり返しが来てしまいます。
その理由は…
前回の炎症と炎症物質の話を思い出してみましょう。
そもそも、炎症の始まりは「何か変だから助けて!」という
細胞・組織からの救援要請でした。
炎症が起きて「何か変」に対処している最中に、
救援要請用の物質が出来なくなったらどうなりますか?
確かに炎症物質ができない以上、炎症は治まります。
でも到着済みの白血球部隊で対処しきれなかったら、
「何か変」は「もっと変」な状態になってしまいます。
ここで「炎症が治まったから薬はもういいやー」と使用をやめると、
「もっと変」に対応するために、
以前よりもっとたくさんの炎症物質を作る必要が出てしまいます。
これがステロイド剤の自己判断中断による「ぶりかえし」です。
だから、ちゃんと到着済み白血球で対応できたのか調べながら
ステロイド(薬)の使用量は減らしていかなければならないのです。
当然、医師の検査・診断が必要ですよ。
ステロイド薬、メカニズムが分かれば怖くはなかった!
途中で「治った!」と思っちゃったことが問題だったんだね!
そこを分かってくれれば、オーケーです。
ステロイドには他にも働きがありますが、
そこはホルモンのところでおはなししますからね。
【今回の内容が関係するところ】(以下20220502更新)