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10 脳神経系のおはなし(3)変性障害と異常の結果(7)

(2)頚椎症・腰椎症

骨のところでは椎骨に注目した頚椎症・腰椎症を、

今回は中枢障害の視点から復習しましょう。

 

骨や椎間板、周辺靱帯等の変化で、

脊髄が圧迫されて各種症状が出てきます。

局所的には、

圧迫されたところに重苦しさと疼痛が出てきます。

神経根症状と呼ばれるしびれや疼痛ですね。

ここに血行障害も加わって

両手のしびれ、巧緻障害が出てくるのが頚椎症。

緻密で巧みな動きが障害(巧緻障害)されますから、

書字やボタンかけがうまくできなくなります。

脊髄はおかしくなったところから下が

全部情報伝達異常になってしまいますから、

歩行・膀胱障害も出てきますね。

 

腰椎症では主に馬尾が障害されます。

両下肢のしびれ、

脱力による間欠跛行が出てきますね。

馬尾というのは、

腰椎2番(L2)以下の脊髄が細い糸状になっているところ。

細い糸状になっているので、

腰椎穿刺をしても脊髄を傷つける危険性が低いですね。

だから腰椎穿刺は腰椎3番と4番の間、ヤコビー線で行います。

頚椎症も腰椎症も、基本は保存療法です。

痛みに関しては薬物療法

(内服に加えてブロック療法も)が行われますが、

どうしてもというときには降圧手術も行われます。

あとは骨のおはなしの椎骨変形症のところも

読み直しておいてくださいね。

 

(3)てんかん

てんかんは、大脳の神経細胞が過剰興奮をこしたため、

脳の症状(発作)が2回以上(反復)起こるもの。

その結果出てくる症状の代表が、けいれんですね。

てんかんは結構高頻度で出現する異常状態です。

ここでしっかり理解してくださいね。

 

てんかんは何らかの原因が脳にある「症候性」、

多分原因が脳にあるけれどもよく分からない「潜因性」、

遺伝的要素があって

18歳までに約8割が発症する「特発性」があります。

原因が分かればそこを治療すればいいのですが、

原因不明だと対症的対処が多くなりますね。

 

症状はけいれん、脱力発作、自動症。

脱力発作は、

全身の筋緊張が急になくなり、バタンと倒れること。

自動症はうろうろ動き、口ももぐもぐさせていますが、

周囲の働きかけに答えない状態。

「自動」中の記憶はありません。

けいれんは、顔や四肢の筋がピクピクと収縮・弛緩を繰り返すこと。

「~発作」と名前がついていますので、

どういう状態かイメージできるようにしてくださいね。

両側対称性に筋肉がビクッとするのが「ミオクロニー発作」。

寝入り際に体の一部が「ぴくっ!」とする、あの全身版です。

 

全身のけいれんは「強直間代発作」と呼びますが、

これは「強直発作」と「間代発作」の2つをまとめたもの。

「強直発作」は、

両側対称性に筋肉が突っ張って固まったようになるもの。

「間代発作」は、両側対称性に四肢がガクガクと動くもの。

倒れて体を震わせている「てんかん」のイメージは、

この間代発作からですね。

体の一部から始まると「部分発作」と呼ぶこともあります。

 

怖いのは「てんかん重積状態」。

5分以上持続する発作又は短い発作でも意識が戻らないものです。

このときには筋肉も脳細胞も酸素不足に陥っていることがほとんど。

気道を確保し、

病院内なら酸素療法、ビタミンB1とブドウ糖入りの補液、

けいれん抑制の薬物療法と続いていきます。

 

「けいれん」は起こしていないけど、

脳神経興奮で見たら「てんかん重積状態!」というものが

「非てんかん重積状態」。

軽い意識障害が急に起き、

反応低下状態が数時間から数日持続します。

このままでは、何かあっても適切な行動をとれません。

だから薬物療法によるコントロールが必要になるのです。

薬によって出てくる副作用は異なりますが

肝臓と腎臓に悪影響が出やすいので注意です。