1 細胞と代謝:生命の最小単位(5)
グルコースからATPを取り出す最初の一歩は解糖系。
解糖系はグルコース1個からピルビン酸2個と、
2個のATP、2枚のNADHを取り出すところです。
よく見ると、2段階に分かれています。
第1段階ではグルコース1個に2ATPを使って、
分解しやすい状態にします。
第2段階で、2個のピルビン酸に分けて
4個のATPと2個のNADHを取り出しています。
本によっては「(-2ATP)+4ATP=2ATP」と書いてあるのは、
このためです。
解糖系は酸素がなくても進みます。
酸素が十分にないときの筋肉運動(無酸素運動)は、解糖系様様。
そのときにはピルビン酸ではなく、乳酸が2個できます。
乳酸のままでは次のTCAサイクルに進むことができませんから、
肝臓で乳酸をピルビン酸に作り直してもらう必要がありますよ。
TCAサイクル(クエン酸回路)は、
ピルビン酸1個から、
ATPとGTP、FADH₂を1個ずつとNADHを4個取り出すところ。
ここも2段階に分けられます。
第1段階はピルビン酸をアセチルCoAにして、
ATPとNADHを1個ずつ取り出します。
第2段階はアセチルCoAをミトコンドリアの中に入れて、
くるりと回します。
くるりと回すと、GTPとFADH₂が1個ずつ、
NADHが3個出てきます。
注意するところは「ミトコンドリア」。
ミトコンドリアは、酸化反応をするところでしたね。
つまり、酸素がないとミトコンドリアは役立たず。
酸素なしではTCAサイクルは回りません。
ちゃんと覚えておいてくださいね。
最後の呼吸鎖(電子伝達系)は、
NADH1個を3個のATPにして、FADH₂1個を2個のATPにするところ。
これまた、場所はミトコンドリアです。
酸素がないと、進まない…ですね。
注意点は、解糖系で出来たNADHはFADH₂に形を変えてから
呼吸鎖の交換に入るというところ。
38ATPを取り出せるところは、
解糖系由来のNADHがそのままミトコンドリアに入ります。
まとめてみましょう。
グルコース1個からできるピルビン酸は2個。
ピルビン酸1個からNADHは4個、FADH₂は1個できます。
さらに解糖系で出来たNADHはFADH₂になりますね。
だから、呼吸鎖には8NADHと4FADH₂が入るはず。
できるATPは8×3+4×2=32個です。
そこに2個のGTPも足しましょう。
GTPとATPは少ししか違わないので、
エネルギー産生の面では一緒にしてしまってかまいません。
「グルコース1個から、36ATP」、ちゃんと作れましたね。
忘れてはいけないこと。
このまとめは「酸素が十分にあったとき」のおはなしです。
酸素が十分にないと、解糖系の2ATPしかできません。
これが「酸素がないと(呼吸できないと)死んでしまう」理由です。
酸素なしでもごくわずかのATPを作ることはできますが、
それだけでは、
ヒトは生命活動を維持できない…ということでもありますね。
あとでおはなしする「臓器・器官」の呼吸器系の受容性が、
早くも分かってもらえたと思います。
あと、途中で出てきた「痩せるためには代謝を上げる」は、
「臓器・器官」の筋骨格系のところにつながっていきますよ。