5 ウイルスの増殖と検査の確認:HIVの例(2)
さらに保健所等で行う検査が見ているものは「抗体」です。
抗体ができるためには、
血液中に増殖したHIVが出てきて、
マクロファージに貪食されて
T細胞(Tリンパ球)に提示されることが必要。
さらにT細胞がTh2細胞に変化してから、
B細胞に抗体産生を依頼して…
ようやくB細胞が作ってくれるものが「抗体」です。
読むだけでも一苦労。
実際に抗体を作るとなると、もっと大変で時間がかかることです。
HIVに感染後、血液中に抗体が出るまでに
通常1か月(遅い人では3か月)かかります。
感染から(抗体ができて)
検査で「陽性!」と正しく出るまでの期間を
「ウィンドウ期(窓が閉まっている:空白期)」と呼びます。
ウィンドウ期に抗体検査をすると、
単なるムダ…なだけではありません。
「陰性だ!
じゃあ、HIVに感染していないんだな!」と誤解した人が、
他の人へと性行為を経て感染を広げてしまう危険があるのです。
抗体ができていなくとも血液中にウイルスはいますし、
感染力はありますよ。
だからこそ「感染が疑われる行為から1か月
(又は3か月)してから検査を受けてください」
とパンフレット等に書いてあるのですね。
では「必ず2週間以上たってから」の部分は何かというと、
抗体とは違うものを見て検査をしています。
1か月未満の検査で見ているものは、
「抗原(HIVそのもの)」です。
でも、ウイルスは目で確認できるサイズではありませんね。
そこで血液にウイルス(抗原)がいるなら、
反応するような抗体をあらかじめ準備しておいて、
抗原抗体反応が起こったか否かを見る方法が
「酵素免疫測定法(EIAやELISA)」です。
「酵素」はどこに使うのかというと、
準備済みの抗体にあらかじめ
「分解されたら色や光を出すもの」をくっつけておいて、
その部分を分解するときに使いますよ。
こうしておけば、抗原抗体反応を
色や光の強さで判定できるようになるのです。
また、「ウイルス(の遺伝子)があるか」を
人工的に増やしてから「量」として確認する方法もあります。
これが後でおはなしするPCR(又はRT-PCR)ですね。
これらの方法だと
抗体ができる前からウイルスの確認ができますが、
どこの保健所等でもできるものではありません。
測定器や道具・検査薬等がそろっているところでしか
受けられない検査です。
だから「感染が疑われる行為から1か月以内の検査」を
受け付けてくれるところは、
あまり多くないと思っておいてくださいね。
そして抗原自体を見る検査で
1度「陰性(見つからなかったよ)」と出ても、
後からHIV抗体検査が
「陽性(抗体がありますよ)」になることもあります。
HIVが性器から血液中に流れ出てくるまで
(ウイルスが増殖して血液に出てくるまで)の
期間にも個人差があることを忘れてはいけませんね。