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11 各論5:細菌(2)桿菌のグラム陰性(5)

(B)ヘモフィラス属

腸内細菌科に続く2グループ目、ヘモフィラス属に入ります。

ヘモフィラス属で有名なのは、インフルエンザ菌と軟性下疳菌ですね。

 

(a)インフルエンザ菌

インフルエンザ菌は「勘違いされちゃった!」菌です。

インフルエンザが大流行したときにその患者さんから発見されたので、

この名前が付けられましたが…

インフルエンザの原因は「インフルエンザウイルス」でした。

人違い(?)のまま名前だけが残ってしまい、

そのせいで誤解を受けてしまう菌です。

 

その正体は、普通の人の鼻咽頭に少量いる常在細菌。

ただ、外側にある膜(莢膜)にaからfまでタイプがあり、

そのうちの1つ(b)が髄膜炎の原因になります。

髄膜炎は小児でけいれんを起こすこともあり、

生命に影響を及ぼす可能性があります。

だからインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae b:Hib)は、

法定接種の対象になっていますね。

b型以外のウイルスは、副鼻腔炎や中耳炎、肺炎のもとになりますが、

そこまで重症化するものではありません。

 

(b)軟性下疳菌

軟性下疳菌は接触感染で広がる性感染症「軟性下疳」の原因菌。

感染して24~48時間で、外陰部や亀頭の包皮に

赤み(発赤)、はれ(腫脹)、

へこみ(潰瘍)や膿だまり(膿疱)ができてきます。

膿疱の中には軟性下疳菌がいますからね。

梅毒で出来た硬性下疳と比べてやわらかいので「軟性下疳」です。

梅毒のおはなしは細菌の最後の部分、

らせん菌よりもっとねじれた「スピロヘータ」のところで出てきますよ。

軟性下疳菌自体は乾燥でも、55℃の1時間加熱でも死ぬ弱い菌です。

薬(消毒薬も、抗生物質も)が良く効きますので、

もし感染してもむやみに恐れずにしっかりと治してくださいね。

 

(C)ビブリオ属

桿菌のグラム陰性、通気性から嫌気性菌の3グループ目が、ビブリオ属です。

看護師国家試験に関係があるとしたら、「腸炎ビブリオ」ですね。

腸炎ビブリオは、塩がないと生きられない好塩菌。

海水(3%)の濃さは、腸炎ビブリオの増殖にぴったり。

だから近海(陸の近くの海)の貝にたくさんいます。

…生の魚介大好きな、日本人にとても身近な食中毒の原因菌ですね。

 

腸炎ビブリオの作る毒は溶血毒。

赤血球の酸素を運ぶ作用が、大ピンチです。

多くは熱に弱い毒素なので、加熱すれば安心。

ごく一部が耐熱性毒素を作り、下痢・腹痛・嘔吐を引き起こします。

この耐熱性毒素は心臓にとっても毒で、生命を危険に及ぼすこともありますよ。