13 各論7:ウイルス(1)DNAウイルス(5)
(C)単純ヘルペスウイルス
ヘルペスウイルスグループの名実ともに代表格は、
単純ヘルペスウイルス1型と2型。
原則として、1型は上半身、2型は下半身に感染します。
初感染が乳幼児期に唾液を介するものだと、大部分は不顕性感染。
ヘルペス歯肉口内炎のように
感染部に水膨れやただれ(水疱やびらん)が出ると、
そこにはたくさんのウイルスがいます。
触ると、そこから他の人に移してしまう可能性があります。
そのまま目をこすってしまうと、角膜ヘルペスの危険もありますね。
また、思春期以降の初感染でも大部分は不顕性感染で済みます。
でも、性行為の多様化で
「上半身なら1型、下半身なら2型」と言いにくくなってきました。
少なくとも性器ヘルペスになったら、
(感染症法)5類の定期把握対象です。
性器ヘルペスは外性器に水膨れやただれ(水疱やびらん)が出て、
激しい痛みを伴うこともあります。
さすがに「変だ?!」と気付ける状態ですよ。
初感染後、1型は主に三叉神経節に、2型は主に腰仙神経節に潜伏感染。
ストレスや過労等をきっかけに再活性化すると…
神経を伝ってその先の皮膚や粘膜に水疱やびらんが出現!
これが回帰発症。
口周りに出来たヘルペスが再発するのはこのためです。
特に2型が回帰発症しやすく、
「ただですらつらい性器ヘルペスがすぐぶり返す!」という
困った状況が起こります。
年に6回以上再発することすらありますよ。
なお、ウイルスが再活性化しても症状が出ない
(「無症候性」)こともあります。
症状は出なくてもウイルスは唾液等に出ていますから、
感染を広げてしまう原因になりますね。
注意しなくちゃいけないのはヘルペス脳症と、
ヘルペス性瘭疽(ひょうそ)、そして新生児ヘルペスです。
ヘルペスウイルスが脳で炎症を起こしてしまったのがヘルペス脳症。
初感染でも、回帰発症でも起こる可能性があって、
発熱・頭痛から
意識障害・けいれん(急性脳症)を起こすと生命の危険です。
急性脳症は原因に関わらず(感染症法の)5類全数把握対象ですよ。
ヘルペス性瘭疽は、指先・爪に水疱等の病変が出て、院内感染の原因に!
これまた初感染でも回帰発症でも起こる可能性があります。
そして新生児ヘルペスは、
主に産道感染(2型が多い)が問題になります。
新生児の皮膚がボロボロになるだけでなく(表在型)、
中枢神経に悪影響を残すことも(中枢神経型)。
全身症状が出ることもあって(全身型)、
どの型でも治療をしないと6割以上は死に至るといわれています。
だから妊婦に性器ヘルペスが確認されたら、
新生児への感染を予防するために帝王切開になります。
感染してしまった後には抗ウイルス薬(抗ヘルペス薬)を使いますが、
有効なワクチンはありません。
少なくとも性器ヘルペスは
「不特定多数との関係を避けて、
コンドームを使う」ことを心がけてください。
TORCHのHに含まれている、
重大な悪影響を及ぼすウイルスであることをお忘れなく!