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3 総論:侵入経路(3)飛沫感染・飛沫核感染

続いて空気ルート(鼻・口、咽頭・喉頭、気管・気管支)から

微生物が入り込む感染。

「気道から移る」ということで「経気道感染」と呼ぶこともありますね。

ここは、似た名前の2つの感染に分類できます。

分けてある以上違う感染スタイルなのですが、

名前が似ているので混同しやすいところです。

注意しなくちゃいけませんね。

「飛沫感染」と「飛沫核感染」です。

 

飛沫(エアロゾル)によって、微生物が軌道に入るものが飛沫感染。

せきやくしゃみで、

唾液や鼻水と微生物が一緒になったものが「飛沫」です。

一応、唾液等が直接体につかない限り、原則として感染しません。

だから、マスクが有効ですね。

唾液等の直撃を防げますし、

呼気の湿気で微生物をマスクで足止めできます。

ヒトにつかなかった唾液等が地面に落ちれば、

もう気道へと入り込むことはできません。

でも床を這って、その手をぺろりと舐めてしまう小児では、

まだまだ体の中に侵入してしまう可能性がありますので、

要注意ですよ。

インフルエンザウイルスに代表される一般的な感染は飛沫感染です。

少し入り込んでしまった微生物が増える前に、

体の外に洗い流す「うがい」。

手の表面に付いた微生物を体の中に入れないための「手洗い」。

「予防のためにうがい、手洗い」の意味、分かってくれますね。

 

飛沫核(バイオエアロゾル)によって

微生物が気道に入るのが飛沫核感染。

微生物それだけで空気中を漂っているものが「飛沫核」です。

飛沫核が空中にあると、いつかはヒトの気道に入り込んできます。

飛沫と違って水分を含んでいませんから

「地面に落ちる」ことを期待できませんし、

地面についても風でまた空中に舞い上がってしまいます。

だから飛沫核感染する微生物に入り込まれて病気になってしまったら、

病気になった人を隔離しないと

微生物が広がり続けてしまうことになります。

もちろん隔離する病院内でも、

そのままでは飛沫核が広まり放題になってしまうので。

病室の空気が外へ(廊下等へ)出ていかない

「陰圧室」に入ってもらうことになります。

陰圧室に入る医療職が微生物を外に連れ出してしまっては、

元も子もありませんね。

だからガウンテクニックや手袋・マスクといった

清潔操作が大事になりますよ。

 

飛沫核感染の微生物としては、結核がありますね。

各地に療養所(サナトリウム)ができたのはこのためです。

ワクチンを接種していても、

免疫力が低下したり抗体量が減少したりすると感染可能性がありますから、

軽視はできませんね。

ましてや医療職でワクチン未接種なんて、

いわば「自ら感染しに行くようなもの」ですからね。