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4 総論:免疫(7)移植とがん

母体と胎児で

「自己か、異物か」というはなしが出たので、もう少し補足。

移植は主に「自分以外のヒト」から移植(自家移植)を受けるので、

当然「異物」として扱われます。

移植をして、

すぐに白血球たちの攻撃を受けてダメになってしまったのでは、

移植をする意味がありません。

だから免疫抑制剤を使って、異物に対する排除を少しお休みしてもらいます。

…そんなときに

微生物に入り込まれてしまったらたまったものではないので。

移植前後は特に微生物対策

(面会謝絶、陽圧のクリーンルーム等)をしっかりする必要がありますね。

 

「本来自分だけど、攻撃しなくちゃ!」という対象が「がん細胞」。

がん細胞は、

自分の細胞が言うことを聞かずに増え続けてしまうようになったもの。

放っておくと増えた細胞で周囲を圧迫するだけでなく、

周囲の細胞に行くはずだった酸素や栄養分を奪い取るため、

周囲の細胞が働けない状態になってしまいます。

 

そんなときにはナチュラルキラー細胞(NK細胞)の出番。

ウイルスその他の侵入を受けた細胞を取り除くときにも働く、

「細胞殺し」のできる白血球の一員です。

白血球の中では珍しく、表面にCD8というサインが出ることがあります。

CD(Cluster of Differentiation)は、白血球の表面にあるタンパク質のこと。

CD8のサインを出すのはキラー細胞とナチュラルキラー細胞。

「細胞除去するからね!」のサインだと思っておいてください。

 

「本来自分」の細胞も攻撃できるということは、

1つ間違うと正常な(健康な)細胞すらも除去されてしまう可能性があります。

それを防止するためにいるのが制御性T細胞(調節性T細胞)。

自己免疫を制御して、自分を攻撃しないための「免疫寛容」の担当ですよ。