10 脳神経系のおはなし(2)感染・腫瘍・脱髄性疾患(4)
(4)脳膿瘍と髄膜炎
脳実質に膿がたまったものが脳膿瘍。
膿を出す原因細菌は、
脳の隣接器官から直接感染することもありますし、
遠隔器官から
血液にのってやってくることもあります。
原因細菌としては
酸素好き(好気性)の連鎖球菌や黄色ブドウ球菌が多いですね。
中耳や副鼻腔、口腔、頭蓋骨に病巣があれば、
細菌は直接脳に入り込みます。
これら器官と脳の位置関係を、
今一度確認してみてください。
肺や心臓、骨盤内臓器からの感染は血行性です。
頭部外傷から直接入り込む感染経路もありますよ。
でもこれらの原因がなく、
突然生じる脳膿瘍もあるので、注意です。
発熱、悪寒に加えて、
膿瘍による頭蓋内圧亢進症状も出てきます。
嘔吐、めまい、動眼神経や外転神経の麻痺が
頭蓋内圧亢進症状ですね。
できる場所によっては失語や麻痺、
小脳失調やけいれん、意識障害が起こることもあります。
意識障害ということは、
気道確保をしてバイタルサイン確認です。
降圧剤・抗けいれん薬と抗生剤といった
薬物療法がメインになります。
感染性の膜の炎症が髄膜炎。
持続する頭痛が特徴的な症状です。
原因としては亜急性から慢性に経過する「真菌性」や、
急性に経過しやすい「細菌性」のほかに
「ウイルス性」もあります。
真菌で一番多いのは日和見感染で有名なクリプトコックス。
細菌性では急に38~40℃の高熱が持続する稽留熱が出ます。
悪寒と激しい頭痛も出ます。
ケルニッヒ兆候は、
仰向けに寝てもらい、膝と股関節を直角に曲げ、
膝を押さえつつ下肢を他動的に伸ばそうとすると出る
伸展制限のことです。
原因は大腿屈筋の攣縮ですね。
頚部硬直というのは、
仰向けの患者さんの頭を持ち上げると首に抵抗があること。
どちらも髄膜に炎症が起き(刺激を受け)たことによる、
髄膜刺激症状です。
入院中に新たに生じた院内感染の可能性もありますね。
細菌性の原因として、
結核の血行内播種(粟状結核)によるものが
あることも覚えておきましょう。
ウイルス性で一番多いものはエンテロウイルス。
中耳や副鼻腔から直接入り込むことも、
心臓や肺にある病巣から血行性で入り込むこともあります。
単に膜の炎症にとどまらず、
脳実質の炎症(脳膜脳症)になることもあります。
水頭症を起こしてしまうと、
脳圧亢進や意識障害、脳神経の麻痺が生じることは分かりますね。
原因に合った薬物療法がとられますが、
原因が分かるまでは対症療法にならざるを得ません。
意識障害が出てしまったら、
気道確保してバイタルサインを確認。
水頭症の予防・緩和のために脳圧降下と脳浮腫対策も必要です。
もちろん解熱剤・鎮痛剤も適切に使いつつ、
水分と栄養状態にも注意することを忘れずに!