10 脳神経系のおはなし(3)変性障害と異常の結果(2)
B アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は
40代以降に発症する原因不明の認知症。
40代未満で発症すると「若年性アルツハイマー病」です。
海馬や大脳皮質が萎縮し、神経細胞が脱落していきます。
海馬は、記憶を担当するところ。
そこにアミロイドβタンパクがたまって、
神経原線維化や老人斑の沈着が起こり、
おかしくなっていく…と考えられています。
その結果として出る認知機能障害が、
アルツハイマー病の中心症状です。
具体的には迂遠な言い回しをする「失語」、
3次元を描こうとして2次元になる
「失行(構成障害:ボタンがかけられない理由)」、
慣れている道で迷う「失認(家族の顔が分からなくなる理由)」、
目標・計画・遂行の抽象化ができなくなる「遂行機能障害」、
そして激しい健忘(近時記憶障害中心の見当識障害)ですね。
中核症状ではない障害が、周辺症状。
ここには不安・焦燥といった心理状態や、
行動障害、精神症状が含まれます。
行動障害は午後から夕方に出現・増悪の多い
徘徊・不穏・暴言・反抗・錯乱等で、
「日没症候群」とも呼ばれます。
精神症状としては幻覚・妄想・性格変化や夜間せん妄が出てきます。
薬物療法としてはコリンエステラーゼ阻害剤が効き、
認知状態や行動障害の改善・進行抑制ができ、生活の質が回復します。
でも消化器系症状の食思不振や悪心・嘔吐、下痢が出やすくなります。
周辺症状には対症療法として抗精神病薬が使われることが多いですね。
いかんせん「原因不明」なので、
特効薬のようなものはありません。
経過が10年以上にわたることが多く、
本人だけでなく家族のサポートも必要になってきます。
本人の残存能力を活かし、自尊心を損なわずに、
役割を見いだいしつつ生活していけるように。
家族はじめ介護者が疲弊して自分の生活を見失わないように。
各種施設や用具・制度の情報を適時に提供できるように、
事前に準備しておきたいところですね。
看護に関係する行政・法制の理解が役に立ちそうですよ。
なお、アルツハイマー病の前段階といえるのが
「軽度認知障害(MCI)」。
記憶力は低下しているけど、
日常生活は問題なくこなせる状態です。
1年後に約1割が、
最終的には約半分が認知症になるとされています。
認知症については、精神のところでおはなししますね。
以上2つは、とても多い神経変性疾患。
ここから先は、
数は多くないものの覚えておいてほしい神経変性疾患です。