10 脳神経系のおはなし(3)変性障害と異常の結果(3)

(2)ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症

A ハンチントン病

まずは運動障害、行動変化、知能低下を起こす

常染色体優性遺伝疾患のハンチントン病から。

運動障害の中に「舞うような」不随意運動が含まれるため、

「ハンチントン舞踏病」とも呼ばれます。

「ハンチントン」というタンパク質を示す部分の

塩基配列が変になって、遺伝してしまったものです。

 

25~50歳で発症することが多く、

易怒性の人格変化から各種症状を経て認知症を起こし

寝たきりになってしまいます。

好発年齢の関係上、発症時に子供がいることが多く、

なぜか子供では(特に男性では)

さらに若年発症することが分かっています。

 

ハンチントン病の不随意運動は

まとめて「コレア」と呼ばれます。

具体的にはしかめ面、舌打ち、手指背屈などが、

本人の意思と無関係に、かつ素早く繰り返されます。

この動きのせいで正しい発音、構音ができず

コミュニケーションが難しくなります。

コミュニケーション手段の書字も、

食事も洗顔も害されますから…清潔維持に介入が必要ですね。

 

コレアに対してはドーパミン遮断薬が有効です。

運動の命令を伝える神経伝達物質の働きを邪魔して、

運動の命令をブロックするのですね。

他の変化や障害に対しては、

薬ではなくリハビリやサポート介入が必要です。

運動機能維持や障害の軽減・拘縮予防は

リハビリ療法の担当ですね。

コミュニケーションは姿勢やボード等で取れるように、

家族等も交えて練習です。

そしてメンタルサポートを怠ると、

絶望や先行き不安からいきなり自傷や自殺企図に至ることもあります。

本人のみならず、家族も支えていく必要がありますからね。

ハンチントン病は厚生省特定疾患治療研究対象事業です。

各種サポートを得ることができますから、

ちゃんとその旨を伝えてあげてくださいね。

 

B 球脊髄性筋萎縮症

同じく遺伝的側面が強いのが「球脊髄性筋萎縮症(BSMA)」。

アンドロゲン受容体遺伝子内の

「CAG」リピートが異常に伸びてしまう

病気(トリプレットリピート病)です。

X染色体上におかしくなったリピートのある伴性劣性遺伝なので、

男性では即発症、女性は保因者になりますね。

20代から40代に発症して、ゆっくり進行します。

10年から20年で、車いすや寝たきりの生活です。

運動神経細胞がおかしくなり、

顔面・舌・四肢の筋委縮と筋力低下が出てきますよ。

進行すると嚥下障害と呼吸機能が低下し、

呼吸器系感染症を合併しやすくなりますね。

延髄を外から見ると丸く見えることから、

「球」とは、延髄の慣用語。

延髄から出ている脳神経は

舌咽神経(第9脳神経)、迷走神経(第10脳神経)、

副神経(第11脳神経)、舌下神経(第12脳神経)。

舌と首の周辺を担当していることが分かりますよね。

だから「球」がおかしくなると嚥下が害されるのです。

眼球は、「球」から出ている脳神経の支配領域ではありませんね。

だから球脊髄性筋萎縮症では眼球運動は正常のままですよ。