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10 脳神経系のおはなし(1)中枢の基本構造と血管異常(3)

B 脳を取り巻く膜での出血と血腫

膜の出血で一番多いのはくも膜下出血。

脳を取り巻く膜は

硬膜、くも膜、軟膜の3層構造。

真ん中にあるくも膜の下は、

脳に血液を届ける動脈が通っています。

そこで出血したものが、くも膜下出血です。

「くも膜下腔走行の頭蓋内主幹動脈の破裂によって、

くも膜下腔に出血」ですね。

 

外傷で起こることもありますし、

非外傷性(特発性)に起こることもあります。

非外傷性の約8割は、

脳動脈瘤破裂(嚢状動脈瘤破裂)。

中年女性に多く見られます。

ごくまれに肩こりや頭痛のみで済むこともありますが、

主症状は頭痛。

そしてほぼ同時に意識障害や項部硬直も見られます。

 

項部硬直とは、仰向けに寝ている体勢から

首を支えて起こそうとすると、

首に抵抗を感じる(硬直)が出ることです。

嘔吐や不整脈、

眼底出血や動眼神経麻痺が出ることもありますね。

 

外科的には、

出血部を縛る・固めるなどしてとにかく止血。

出血後24時間(特に出血後の6時間)は

再出血しやすいため、血圧を下げつつ、

バイタルサインと循環状態に要注意です。

血管のけいれん(攣縮)も起こりやすいため、

尿量管理をはじめとした

水分・ミネラル状態にも注意。

水頭症も合併しやすいので、

脳室ドレナージ管理も必要になってきますね。

鎮痛剤や鎮静剤も併用されることがありますよ。

 

頭部外傷を負ったとき、

脳に血液が届かなくなるだけでなく、

その出血自体が大問題です。

さらに、たまった血液(血だまり:血腫)が

脳を圧迫してしまうことがあります。

この血腫のせいで「変!」が生じたのが、

外傷性頭蓋内血腫。

 

頭蓋骨骨折を伴うことが多いのが、

急性硬膜外外傷性頭蓋内血腫。

普段、硬膜は

頭蓋骨の内側にぴったりとくっついています。

ところが外傷のせいで、

硬膜と骨の間に血だまり(血腫)ができてしまうと、

怖いのが脳ヘルニアです。

脳は頭蓋骨内の限られた空間内にあります。

骨で外力から脳を守り、

膜と液体でさらに衝撃からも脳を守っています。

うまくいっているときは、

とても安全性が高い構造ですね。

 

でも一旦「変!」が生じて、

血(血腫)や水分(水頭症)がたまってしまうと

(貯留してしまうと)、脳はきつくてたまりません。

その結果、

脳が少しでも空いているところを求めて

はみ出してしまうと「脳ヘルニア」です。