11 精神のおはなし(1)せん妄、認知症、うつ病(6)
(2)薬物療法
薬物療法の基本は「抗うつ薬」。
ここに理解には、
神経伝達物質のセロトニンのおはなしが必要です。
ヒトの「精神」は、
様々な神経細胞の活動で成り立っています。
あまりに複雑なので
すべてが分かっているわけではありませんが…
少なくとも大事なところを担当する
神経の神経伝達物質は分かっています。
ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンです。
それぞれの得意分野はノルアドレナリンが「意欲・興味」、
ドーパミンが「性と欲動」、セロトニンが「衝動」です。
これらが3つうまく役目を果たす
(重なりあった)結果生じるのが、
「気分」や「認知」だと思ってください。
このとき、セロトニンの働きが弱すぎたらどうなるか。
何かを思いついて、行動に移そうとしても、
そのためのきっかけ(衝動:突き動かすもの)がない状態ですね。
「この状態はうつ病の『抑うつ気分』
『興味・喜びの喪失』ではないか?
それならばセロトニンをコントロールする薬を
入れればいいのではないか?」
この気付きからできたものが「抗うつ薬」です。
セロトニンのコントロールする薬として
最初に出来たものが「三環系抗うつ薬」。
炭素(C)で出来た円環(ベンゼン環)が
3つあるので、「三環系」です。
三環系抗うつ薬は、
ノルアドレナリンとセロトニンを使いまわしできるようにして、
最終的にノルアドレナリンとセロトニンを
増やした状態にします。
意欲・興味(ノルアドレナリン分野)と
衝動(セロトニン分野)が回復すれば、
「『うつ病』に効いた」ということになります。
ところが三環系抗うつ薬には
「抗コリン作用」という困った副作用がありました。
「コリン」と聞いたら「アセチルコリン」でしたね。
アセチルコリンによって伝達される
自律神経系の働き(特に副交感神経系)が
害されてしまうものが「抗コリン作用」です。
口渇、便秘、目のかすみ、排尿困難が代表的。
便秘と排尿障害がどんなに大変なことかは
今までに勉強してきましたね。
目のかすみは、転倒事故につながりかねません。
口渇はそこから飲水過多を引き起こして、
電解質異常にもつながります。
感覚的に「いやだなぁ」というだけでなく、
人体の働きからも
「いやなことが起こりそう…」な副作用ですね。
ほぼ同じ時期に四環系抗うつ薬もでき、
副作用を少し軽くでき、
多少は即効性も出せるようになりました。