11 精神のおはなし(1)せん妄、認知症、うつ病(8)
うつ病は治療をしなくとも
1年以内に6~7割は改善するとされています。
休養の必要性と薬がなくても治る可能性のあることから
「うつは心の風邪」と呼ばれることもあるくらいです。
でも「風邪」はこじらせると大変。
「うつ病」もこじらせてしまうと大変です。
初回発症の半数以上は再発し、
再発するほどどんどん頻繁に発症するようになってしまいます。
うつ病に他の精神症状が加わってくることもありますよ。
例えばそう状態(や軽そう状態)が加わると、
次のおはなしの「双極性障害(躁うつ病)」ですね。
軽度のうつ病なら、非薬物療法が主になります。
必要に応じて抗うつ薬を使うこともありますが、
効果が出るまで早くとも数日かかります。
最初は不眠・不安対策の抗不安薬が使われますよ。
中度から重度のうつ病では、
抗うつ薬(選択性セロトニン再取り込み阻害薬)が使われます。
場合によっては三環系抗うつ薬も使われますね。
そのときには副作用の存在と対処をお忘れなく。
あまりに自殺企図が切迫しているときには、
適切な電気刺激により神経細胞の働きをリセットさせる
「修正型電気けいれん療法」が用いられることもありますよ。
(4)少し特殊なうつ病
うつ病の基本スタイルが分かったところで、
少し特殊なうつ病も簡単に。
「仮面うつ病」は身体症状が前面に出て、
本来主になるはずの気分の変調が隠れてしまっているもの。
「季節性うつ病」は、
秋から冬に発症して春夏に寛解することが多い、
特定季節で発症するもの。
「産後うつ病」は、
産後1~3か月に多い罪責感が強く出るものです。
罪責感の内容に多いのは
育児の悩みと母親としての役目が果たせないことですね。
産後うつ病は、マタニティブルーとは違いますよ。
マタニティブルーは産後3日後くらいから出る、
涙もろさがメインになる情動変化。
出産後の女性ホルモン分泌量の急激変化が一因ですからね。
また「非定型うつ病」という
上向き気分への変動が見られるうつ病もあります。
こちらは「過眠」や「著しい食欲増加」だけ見ると
うつ病とはなかなか気付けません。
でも抑うつ気分に「手足の異様な重さ」や
「長期対人関係異常等による著しい社会的・職業的障害」も見ると
先程確認したうつ病の病態と重なってきますね。
いずれも基本は「うつ病」なので、
治療の方向性や気を付けることは一緒です。
ただ、季節性うつ病には
「高照度光線療法」が効きます。
毎日、1~2時間1500~10000ルクスを
浴びる治療方法です。
大体ですが、晴れている日(南側に窓がある)の
屋内~曇りの日の屋外くらいの光です。
セロトニンは、
睡眠サイクル(概日リズム)に関係の深い
メラトニンのもとになっています。
メラトニンは視覚で感じ取った光をもとに
分泌調節がされることを思い出せば、
「メラトニンを作るためにセロトニンを作る、
だからセロトニン不足のうつ病が治るんだ!」と
イメージできるはずです。