11 精神のおはなし(2)双極性障害、統合失調症、物質使用障害、ストレス障害(8)
(1)急性ストレス反応、心的外傷後ストレス障害
急性ストレス反応とは、
災害、犯罪被害などの命にかかわるような
深刻な出来事あるいは性暴力を
体験・目撃したことが契機になり生じる急性一過性の精神障害。
きっかけになるものが「トラウマ体験」ですね。
様々な症状が出てきます。
不随意的にトラウマ体験の苦痛な記憶が
反復される「侵入症状(フラッシュバック)」。
幸福・愛情といった陽性情動を感じられない
「気分の陰性変化」。
トラウマ体験やそれに密接した関連記憶・思考・感情を
意識的に(又は無意識的に)回避する「回避症状」。
強い不安やイライラのために不眠になる「覚醒症状」。
他者の視点から自分を見ているように感じる「解離症状」。
他にも生活範囲の制限や社会との信頼性喪失により
対人関係が変化し、
社会的・職業的機能障害も出てきますね。
通常は、数日で落ち着くはず。
1か月続くと、慢性化して「
心的外傷後ストレス障害」になってしまいます。
身体的な応急処置(ファーストエイド)は
イメージしやすいものですが。
心的応急処置
(サイコロジカルファーストエイド:PFA)も必要ですね。
内側からのストレス防御が間に合わなかった分、
外側から心の安全・安心の確保を提供してあげてください。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、
多くの人にとっては日常見慣れない突然の
衝撃的出来事の経験又は目撃により生じ、
1か月以上慢性化してしまったもの。
本来なら、ヒトの体は過度な恐怖体験を
そのままの形では記憶しません。
大脳基底核(大脳辺縁系のそば、
本能レベルに作用するところ)にある扁桃体は、
「恐怖」によく反応するところ。
記憶を担当する大脳辺縁系にある「海馬」に、
「これはそのまま記憶しないで!
もうちょっとオブラートにくるんで!」と
特定の情報記憶を抑制する働きがあります。
同時に視床下部に
「ホルモン出して!ストレスに耐えなきゃー!」とお願い…
これが、ヒトのストレスに耐えるための機能です。
でも、扁桃体がうまく働かないと。
海馬は恐怖といった原因体験等をそのまま記憶してしまい、
視床下部からストレスに耐えるための
ホルモン分泌命令も出せません。
そうすると、ずーっと嫌なことを思い出し、
急性ストレス反応で出た症状が出続けてしまうのです。
成人では3か月ほどで約半数が回復しますが、
1年以上残ってしまう人もいます。
「すべて忘れたい!」と
アルコール依存になってしまうリスクも高くなります。
治療は、主にトラウマ焦点化認知行動療法や
EMDRなどの心理療法です。