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6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(16)

「なんだかずっと痛い」慢性胃炎の原因の代表は、

先程出てきたピロリ菌。

自己免疫性、原因不明の慢性胃炎もありますね。

自己免疫性慢性胃炎では、

内因子を作る組織が萎縮してしまい

ビタミンB12の吸収不全が起こることがあります。

萎縮は胃がんのリスクも高めますので、

内視鏡で定期的に様子を見る必要がありそうです。

 

内因子は胃で作られる

ビタミンB12吸収に不可欠な糖タンパク質。

ビタミンB12は、

細胞分裂(の前提として必要なDNA合成)に

深く関係していましたね。

細胞分裂の必要性と、

がんの放射線治療について確認しておきましょう。

 

放射線治療というのは、

放射線を当てることによって細胞のDNAに傷をつけ、

細胞分裂できないようにする治療方法。

DNAが多少傷ついても

お直しサービス(酵素による補修)がありますが、

直すところが多いと

次の細胞分裂までに直し終わりません。

DNAの変なところ(DNAが傷ついたところ)が

たくさんあると、

DNAの複製自体ができずに

細胞分裂できなくなってしまいます。

これはがん細胞の増殖が止まった状態ですね。

また、DNAが傷ついたことで

記録してあるタンパク質の情報を

(転写・複製を経て)発現できなくなります。

がん細胞が酵素をはじめとする

タンパク質を作れなくなるのです。

そもそもあったタンパク質も

放射線で変性して使い物にならなくなっていますから、

がん細胞はATPを作ることができません。

やがてATPを作れずに兵糧攻めに負けたがん細胞が死んでいく…

これが放射線治療です。

 

でも、放射線はがん細胞だけに届くわけではありません。

周りにいる正常細胞にも同じことが起こります。

正常細胞は細胞分裂までに

十分なDNAお直し時間があるはずですから、

がん細胞と比べれば影響は少なくて済むはずです。

ただ、比較的生まれ変わりの早い細胞

(寿命の短い細胞)では、

DNAお直しが間に合わないことが多くなります。

それが舌(味蕾)、小腸上皮細胞、赤血球です。

 

これらの細胞が役目を果たせないと、

味覚異常、疼痛による食思不振、

吸収不良による栄養不良、貧血…全身に悪影響ですね。

口腔内の影響については、

前回の上咽頭がんの放射線治療で先におはなしした通り。

だから放射線治療は当たる場所をできるだけ限定して、

がん細胞に効果がありつつ

正常細胞に悪影響が出ないよう繊細な調節がなされます。

それでも放射線が当たってしまうところでは、

どんなことが起こり、何に気を付ければいいのか、

ちゃんとイメージできるようになってくださいね。

細胞分裂に必要な

ビタミン等が欠けたときについても、同じことですよ。