6 体温のおはなし(3)上部消化器系(+肝胆膵)(28)

(3)肝移植

今までのおはなしの中で

何回も出てきた「肝移植」。

移植である以上、

提供者と免疫抑制の問題があることは分かりますね。

しかも生体肝移植となれば、

渡す方(ドナー)も、受け取る方(レシピエント)も、

感染症等に十分注意する必要があります。

受け取る方は特に強く免疫抑制をしているはずなので、

感染症は即生命危機。

肝移植を受けた人の死亡原因の多くは感染症で、

移植から6か月以内が要注意なのはこのためです。

 

おまけ:劇症肝炎

「劇症肝炎(劇症化)」という言葉は

何回か出てきましたね。

これは肝機能が短時間に低下してしまうこと。

肝性脳症、黄疸、腹水、出血傾向といった

急性肝不全症候の出る代表例です。

 

「黄疸」というのは

血液中ビリルビンが多くなりすぎて皮膚や粘膜に沈着したもの。

先天性の「ビリルビン代謝異常症」では、

肝細胞がおかしいせいで出る体質的黄疸が出てきます。

先天性だけでなく後天性もあるポルフィリン症は

ポルフィリン・ヘムの代謝異常。

後天性のポルフィリン症は

「晩発性皮膚ポルフィリン症」ですね。

慢性の肝障害と

色素沈着・日光過敏症を示す皮膚症状が出てきます。

慢性肝障害ではHCVや肝がんを合併することが多くなります。

外的要因になりうるのは薬、アルコール、感染、ストレス妊娠等。

休息をちゃんと取り、水分をしっかりとるようにしてください。

 

「腹水」は、腹腔内の液体貯留。

体の向きを変えると

水分のたまっている位置が変わりますよ。

「肝性脳症」は、

肝臓の分解工場としての機能が低下し、

アンモニア等の毒物が血液中に増えたせいで

神経細胞の情報伝達が邪魔された状態です。

キーワードは「羽ばたき振戦」ですね。

これは手のひらを下にして腕を伸ばしてもらい、

そこから手のひらを(背屈させて)

見せてもらうように指示すると…

手のひらがぱたんと倒れ、またすぐに元に戻ります。

この「急に掌屈、すぐに背屈!」の繰り返しが、

バサバサと羽ばたいているように見えるので

「羽ばたき振戦」です。

神経の「収縮!」命令が邪魔されて、

ときどき命令が途絶えてしまっているのですね。

肝性脳症を放置すると、脳まで浮腫を起こし、

脳圧上昇、けいれん、異常呼吸や瞳孔不同が見られます。

瞳孔不同は脳神経の出発地点の1つ、

中脳付近がおかしくなってきた証拠です。

 

劇症肝炎は多臓器不全を引き起こしやすく、

予後はあまりよくありません。

特に播種性血管内凝固症候群(DIC)を発症するか否かで、

予後は大きく左右されます。

とにかくアンモニア等を除くために、

血漿交換や人工肝補助で肝臓の代わりをしてもらいましょう。

可能なら、肝移植を準備した方がいいですね。

 

肝性脳症と同じく「肝性」の名が付く「肝性口臭」。

便の臭いに少し甘さが加わったような口臭になります。

これは血液中に増えたアンモニアのせい。

糖尿病でケトン体が増えて、

アセトン臭(甘い匂い)が呼気に出るのと同じですね。