7 体温のおはなし(4)内分泌系(代謝異常)(12)
(2)糖尿病の合併症
糖尿病の怖さは、合併症の怖さでもあります。
急性合併症には低血糖(→昏睡)、
高血糖高浸透圧性昏睡、ケトアシドーシス昏睡があります。
3種類の昏睡は、原因が違いますよ。
1つ目は薬等が効きすぎて
血中グルコース濃度が下がった低血糖状態による、
脳細胞のエネルギー不足で起きた昏睡。
対策にはブドウ糖(グルコース)のタブレット携帯です。
ここは「低血糖症」のところでもう1回確認しましょうね。
2つ目の高血糖性高浸透圧性昏睡は、
腎臓の働きまでもがおかしくなり
(多尿からの)脱水から循環不全を起こしたもの。
体内水分量チェックは欠かせません。
3つ目のケトアシドーシスの始まりは、
「全身細胞のグルコース取り込み」が働いていないこと。
インシュリンは、
全身細胞に血液中グルコースの取り込み号令を出しています。
インシュリン不足(もしくは言うことを聞かない状態)では、
細胞にとってご飯にあたるグルコースが不足します。
このままではATPを作れません。
細胞の生存に必要な最低限度のグルコースは
GLUT(グルコーストランスポーター)という膜タンパク質が
ATPいらずの拡散移動で届けてくれますが…。
やっぱり「ATPのもと」不足は深刻です。
特に指揮命令を担当する脳が
ATP不足になってしまっては一大事。
そこでヒトの体は脂質を分解して作った
アセチルCoA由来の「ケトン体」を作ります。
ケトン体はアセトン、
β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸をまとめた呼び名で
脳にとっては非常食にもあたるエネルギー源です。
ところが、
このケトン体は水(血液)に溶けると酸性になります。
ヒトの体はpHの恒常性を守らないと生きていけません。
血液pHの正常域はpH7.40±0.05。
ここから酸性(数字の小さいほう)に傾くとアシドーシス、
アルカリ性(数字の大きいほう)に傾くとアルカローシス。
ケトン体のせいで血液が酸性に傾いてしまうと、
ケトアシドーシスです。
血液pHが正常域からあまりにも離れてしまうと、
細胞は正常に働くことができません。
脳細胞まで正常に働けなくなってしまった、
これがケトアシドーシス昏睡です。
血液pHが分かればすぐに注意できますね。
血液中にケトン体が増えてきたサインは、アセトン臭。
呼気がマニキュア除光液のような
甘い匂い(アセトン臭)になります。
これが出たら、要注意のサインですよ!