8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(2)大腸(2)
(2)感染性腸炎
大腸の炎症で多いのは、感染性腸炎(腸管感染症)。
病原微生物が食べ物や水などから体内に入り(経口感染)、
腸管内で増殖(さらに毒素も放出)して、
悪心・嘔吐・下痢・腹痛等の急性胃腸炎症状を伴います。
日本では、年に3~4万人が食中毒を発症しますね。
症状のメインは下痢。
原因や進行度合いによって軟便くらいのものから
水様便・血便まで出ることもあります。
水分吸収が不十分になって
脱水症の危険があること、分かりますか?
嘔吐もしていたら、脱水警報レベルです。
乏尿や起立性低血圧を起こしたところで
脱水に気付かないと、
意識障害を伴うショックに陥り、死の危険です。
脱水は腎不全にもつながることも、お忘れなく。
原因は細菌、ウイルス、原虫等多種多様。
基本的には全部自然治癒待ちの対処療法になります。
下痢には自浄作用もありますから、
最初から強い止痢薬は使いませんよ。
吐物や糞便から感染しないように注意しつつ、
くれぐれも脱水を起こさないように!
ボツリヌス菌の出す神経性毒素、
腸管出血性大腸菌による溶血性尿毒症症候群(HUS)、
脱水からのショックが腸管感染症の3大死因ですからね!
A 腸結核
腸結核は、文字の通り、
結核菌が腸で炎症を起こしたもの。
小腸や結腸に輪状・帯状潰瘍ができる、
慢性滲出性下痢の一因ですね。
下痢以外には、特有の症状はありません。
多くは、他の病気疑いの検診(内視鏡等)で
見つかることになります。
腹痛、不快感、悪心、嘔吐、食欲不振、血便、
発熱、体重減少等が出ることはありますよ。
結核菌はヒトの体の中に入って少しおとなしくした後、
高齢・人工透析・移植・AIDS等で
免疫が弱まってきたころに悪さをすることがあります。
それが腸で起こった、ということですね。
呼吸のところでおはなしする薬を使った、
4剤併用治療になります。
数か月に及ぶうえ、
他の薬との相互作用に注意する必要がありますね。
B クローン病、潰瘍性大腸炎
同じく慢性滲出性下痢の原因になるのが、
クローン病と潰瘍性大腸炎。
どちらも、原因不明の慢性炎症を起こすもの。
完治ではなく、寛解とQOLを高めることが目標になります。
クローン病は、線維化や潰瘍化を伴う肉芽腫性病変。
比較的若年者に多く、
口から肛門までの全消化管に出るのがポイント。
下部小腸(回腸)と大腸に発生しやすいのですが、
何よりも肛門病変が出るのが特徴になりますよ。
症状は下痢はじめ、腹痛、貧血、発熱。
早いうちから痔ろう等の肛門症状が出始めます。
さらに進むと低アルブミン血症や
低コレステロール血症のように
吸収障害を反映した「低栄養」が出てきます。
腸管の癒着、狭窄からイレウス、
穿孔も起こりうる怖い状態です。
腸管閉塞や穿孔が起こってしまったら手術になります。
炎症を薬で抑えつつ、何よりも栄養補給が大事です。
栄養状態が改善されれば、炎症も改善されてきます。
弱り切っている腸管にできるだけ負担をかけたくないので、
カロリーとタンパク質を多くとりつつ、
低脂肪、低残渣、低刺激を実現できる
成分栄養剤もうまく使っていきましょう。