8 下部消化器系・生殖器系のおはなし(3)生殖器系(5)
3 女性生殖器系の異常
女性生殖器系は、
骨盤内に卵巣、子宮、膣がおさまっています。
骨盤底筋群が弱ると、直撃を受けてしまうところですね。
卵巣から2種類の女性ホルモンが出るせいで、
LHサージと月経で切り替わる2相性を示します。
女性ホルモンは、乳房の問題と無関係ではありません。
ここでは最初に乳房周りがおかしくなったときのおはなし。
次が月経がらみのおはなし、
がんや更年期のおはなしと続き、
最後に排尿障害と臓器脱について
もう1度おはなししましょう。
(1)乳房周りの「変!」
乳房は、母乳を作る乳腺の周りに
間質細胞や脂肪等がついたもの。
母乳は血液から作られます。
子にとっては、
母体からの免疫グロブリン(Ig-A)を含むほぼ完全栄養。
泣き所はビタミンK不足でしたね。
止血に必要なビタミンK補充がされないと、
消化管出血の新生児メレナの危険です。
母乳提供時に怖いのが、乳腺炎。
乳房のしこりや皮膚の発赤、
痛みや発熱だけではありません。
全身症状として発熱、悪寒、頭痛、関節痛、
脇のリンパ節の腫れが出てきます。
母乳がたまったことで起こる
授乳期固有の「急性うっ滞乳腺炎」と、
細菌感染による「急性化膿性乳腺炎」があります。
化膿の原因になる細菌は
皮膚常在菌の黄色ブドウ球菌ですが、
乳頭から乳管、乳腺繊維内へと広がって
膿を作る可能性があります。
膿がたまってしまうと切開して
ドレーンを入れることになりますので、
「変だ」と思ったら、
何はなくとも受診してくださいね!
同じく「ん?」と気付いたら
すぐに受診してほしいのが乳腺症。
乳腺症自体が問題なのではありません。
すぐ後でおはなしする「乳がん」と
ちゃんと区別をつける必要があるからです。
乳腺症は乳管上皮細胞(実質)と、
間質細胞の「増生(増殖と細胞成長)と
萎縮(細胞縮小と数の減少)、化生(組織変化)」等が
同時に混ざり合って起こるものです。
これらの変化自体は、正常乳房でも起きること。
痛み、しこり、乳頭からの分泌物といった症状が出たら、
乳腺症です。
月経や女性ホルモンの影響とされていますが、詳細は不明。
乳腺症なら、経過観察と対症療法で大丈夫です。
注意してほしいのが、
乳がん好発年齢と重なる糖尿病性乳腺炎。
インシュリン非依存型糖尿病の中高年女性に多く、
組織を見れば良性の乳腺腺維症だと分かります。
切除すると再発しやすいので、
この病気と分かれば経過観察になります。
何より本人の既往申告が大事になってきますので、
既往歴を聞き逃さないように!