9 呼吸器系のおはなし(4)呼吸中枢とその異常(2)
「呼吸」が正常にできるところを確認できました。
このとき、
主に中枢が呼吸命令を出すもとになるのは、
血液中の二酸化濃度情報です。
「二酸化炭素が増えてきたから、呼吸するか…」ですね。
でも慢性的に呼吸状態が悪い
(慢性呼吸器系疾患)人だと、
うまく息を吐き出せないせいで、
血液中の二酸化炭素濃度はいつも高いまま。
呼吸中枢自体も「これぐらいならまだいいか」と
二酸化炭素が高い状態に慣れていってしまいます。
だから酸素療法を受ける人の呼吸中枢は、
血液中の酸素濃度を基準に
呼吸をするように切り替わっています。
ここで、酸素流量が定められた以上になったらどうなるか。
まず、酸素がたくさん体の中に入ってきたので、
血液中の酸素濃度は上昇します。
呼吸中枢は呼吸の必要を感じません。
血圧中の二酸化炭素濃度が高い状態になれてしまっているので、
血液中二酸化炭素濃度を呼吸のきっかけにしてくれません。
結果、呼吸が止まってしまいます。
これが、CO₂ナルコーシス。
酸素療法を受けている人に、
必要以上の酸素を流してはいけない理由です。
呼吸が止まると、
血液中二酸化炭素濃度が上がって呼吸性アシドーシスですよ。
同様に、反射と中枢のお世話になっているのが
「せき(咳)」ですね。
気管支粘膜にある咳受容体が感覚器。
延髄にある咳中枢が情報を受け取り、
呼吸筋と喉頭にその命令を伝えます。
短く息を吸って(吸気相)、
声門を閉じて呼吸筋を収縮させて(加圧相)、
声門をあけると同時に爆発的呼気(排出相)です。
乾性か湿性かは、痰の有無で決まります。
痰は1日約100㎖出る気道分泌液。
日々、無意識に嚥下しています。
痰が増えるのは刺激物が入り込んできたとき。
タバコ、感染、アレルギー反応…
寒気(さむけではなく、冷たい風)も刺激になります。
気管切開になった人で痰が増えるのは、
副鼻腔等での加温・加湿がされていない空気が
いきなり気道に入り込むから。
増えた痰はちゃんと取り除かないと、
気管の中を空気が通りにくくなってしまいます。
痰が気道を口の方へ(肺胞側から喉頭側へ)
移動している途中で聞き取れるのが、
喘鳴(ぜいめい)。
呼吸に伴い聞き取れる
「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という音で、
気道の狭窄・不完全閉塞で空気の流れが乱れ、
振動している証拠です。
気道(通り道)や肺(交換所)のところで
おはなしした肺雑音とつながりますよ。
【あとがき(ここまでの3回分)】
以上が呼吸中枢(と咳中枢)のおはなしでした。
呼吸に何が必要か、復習してみましょう。
「通り道」「交換所」「きっかけ」「胸郭」「中枢」…
これらのどこかがおかしくなると、
呼吸数に反映されてくるのですね。
呼吸がおかしくなる原因はまだあります。
呼吸中枢のいる延髄はじめ、
神経がおかしくなってしまったときです。
呼吸中枢の基本は、今回確認できました。
次回は、神経全般(脳や脊髄メイン)について
理解を深めていきましょう。