9 呼吸器系のおはなし(1)通り道と赤血球(8)
(5)慢性閉塞性肺疾患
COPDという言葉を耳にしたことはありますか?
慢性閉塞性肺疾患が、COPDですね。
タバコ煙を主にする有害物質を
長期にわたり吸入・暴露を受けることで生じた、
肺の炎症性疾患のことです。
タバコが原因のとき、
主な炎症の場は末梢気道(呼吸細気管支)です。
タバコを吸っている(吸っていた)
高齢者の慢性咳、痰の主原因です。
原因がタバコなら、何よりも禁煙!
あとは必要に応じて
気管支拡張薬の頓用(必要なときだけ使用)。
何か感染症にかかると増悪して、
呼吸困難の度合いが上がります。
SpO₂が90を超えるように、
酸素療法がおこなわれるはずです。
SpO₂は正常が95~98。
100になることはありません。
細胞の立場に立ってみると、
95を下回ると「む?足りない?」と分かるくらい。
90では「苦しい!早く助けて!」という状態です。
だからといって、
ただ酸素を流せばいいというものではありません。
その理由は
「余分な酸素が無駄になる」だけではありませんよ。
呼吸中枢のところでおはなししますが、
キーワードの「CO₂ナルコーシス」だけは
覚えておいてくださいね。
3、赤血球の異常
体の中に酸素を取り入れる方法について
「正常」と「変!」を確認している途中ですが。
酸素が体の中(血液)に入っただけでは、
実はまだ不十分。
赤血球がいてくれるからこそ、
全身の細胞まで酸素が届けられるのです。
赤血球は酸素を全身に運ぶ血球で、
男性と女性で正常値が異なること
(男性約500万個/㎕、女性約450万個/㎕)、
寿命が120日ほどしかないことは生理学等で勉強しましたね。
だから材料不足や造血幹細胞の異常があると
すぐに影響が出てきてしまいます。
ここでは赤血球が「変!」になる例として、
貧血と赤血球増加症についておはなしします。
(1)貧血
貧血にはいろいろな原因があります。
一番多い鉄欠乏性貧血についておはなしした後、
ちょっと特殊な貧血として
巨赤芽球性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、
そして出血性貧血についておはなししていきますよ。
A 鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は、
体内の鉄が何らかの原因によって欠乏したために出る貧血。
鉄は、赤血球の中にある色素ヘモグロビンの材料です。
ヘモグロビンが足りなくなると、
赤血球は小さくなってしまいます。
だから鉄欠乏性貧血は小球性貧血の代表です。
鉄は大事なミネラルなので
体の中にためておく(貯蔵鉄)のですが、
この貯蔵分まで使い果たしてしまうと
血清中の鉄まで減ってきます。
こうなると、鉄欠乏性貧血一直線です。
急に成長する小児・学童期や
妊娠・出産・授乳時には要注意ですね。
男性で成人後だから安心…なんて言ってはいられませんよ。
少量でも持続する出血は、鉄欠乏性貧血を引き起こします。
女性の月経だけでなく、がん、潰瘍、大腸ポリープ等の
消化管出血の存在もお忘れなく!
鉄欠乏性貧血の特徴は、
爪がもろく凹状に反り返る「さじ状爪」。
爪のケラチンを作るところが酸素不足で
「変!」になった結果です。
髪の毛の質が悪くなるのも同じ理由からですね。
もちろん、一般的な貧血症状のどうき、息切れ、
めまい、頭痛、全身倦怠感等も出てきますよ。