10 各論5:体温(感染・免疫):③原虫に効く薬(1)
原虫に効く薬は、まとめて「駆虫薬」と呼びます。
原虫にも色々います。
日本でお目にかかりやすい原虫のトップ3は
アニサキス、横川吸虫、裂頭条虫。
トップ3を魚に住む寄生虫が占めています。
日本ではすっかり減りましたが、
便を肥料に用いる地域では原生生物がいっぱい。
線形原生生物が蟯虫(ぎょうちゅう)、
回虫(かいちゅう)など。
扁平原生生物は無鉤条虫(むこうじょうちゅう)や
肝吸虫などが含まれます。
あとは熱帯に多い赤痢アメーバや
マラリア原虫を忘れてはいけませんね。
近年多いエキノコックスや、
胎児に影響のあるトキソプラズマもこのグループです。
まず、アニサキスへの対処は薬ではありません。
「70℃以上で加熱する!胃に入ったら取り除く!」
…これが全てです。
横川吸虫と裂頭条虫に対しては、
プラジカンテル(ビルトリシド)を使います。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057563
プラジカンテルは細胞膜のリン脂質を変化させて、
カルシウムイオンの流入量を変えてしまいます。
その結果原虫が死んでしまうのです。
禁忌は有鈎嚢虫がいる場合。
虫自体にはちゃんと効いて、虫は死ぬのですが。
死んだ虫の袋(嚢胞)が残るせいで、
目や脳に回復困難な病変が残ることがあります。
嚢胞の場所によっては失語や片麻痺、
脳梗塞や眼障害の危険です。
あと、抗結核薬のリファンピシン使用中も禁忌です。
リファンピシンとの相互作用のせいで、
プラジカンテルの血中濃度がほぼ0になってしまいます。
これではプラジカンテルを飲む意味がありませんね。
日本では減った原生生物たちの感染。
海外旅行時に体に入り込まれる可能性は、
まだまだありますよ。
扁平原生生物にはプラジカンテルが、
線形原生生物には
コンバントリンやメベンダゾールが使われます。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058444
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00017020
入り込まれないことが一番です。
現地の食事や水には注意してくださいね。
あと、近年増加中のエキノコックスは
条虫(扁平原生生物)の仲間。
キタキツネの寄生虫で、
入り込まれてもすぐに症状が出るわけではありません。
5~10年ほどで肝臓で嚢胞(虫のいる袋)を作り、
肺・脳・骨髄へと転移していきます。
嚢胞を外科的に切り取ってしまうしかありません。
薬の出番は、残念ながらありませんよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20230503更新)