12 各論7:呼吸(中枢・精神):⑧うつ・双極性障害の薬(5)
三環系抗うつ薬に続き四環系抗うつ薬を紹介しましたが。
「やっぱり、使いにくいって!」
…ごもっともです。
だから改良されて生まれたのが、
選択的セロトニン受容体阻害薬(SSRI)と
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)です。
再取り込みが阻害される
(分解されずに済む)対象が限定されたので、
「少しは」注意する点が減りました。
でも、セロトニンやノルアドレナリンは
体の中で広く使われる神経伝達物質。
残念ながら、併用注意薬はあまり減っていませんよ。
選択的セロトニン受容体阻害薬(SSRI)の一例として、
パロキセチン塩酸塩水和物(パキシル)を紹介します。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058794
禁忌は本剤にアレルギーのある人と、
MAO阻害薬使用中(と中止後2週間以内)の人と、
ピモジド使用中の人。
「MAO阻害薬は同じ働きの薬だから、セロトニン症候群の危険で…
ん?ピモジドって何?」
ピモジド(オーラップ)はアドレナリンα受容体拮抗薬。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00052995
統合失調症等でドーパミン受容体をブロックするときに使う薬です。
ピモジドとの併用により、
QT延長や心室性の重い不整脈が引き起こされる可能性があるから
「禁忌」なのですよ。
あと、警告に
「若年者(7~18歳)のうつには効果がないかも」と書かれています。
海外では「自殺リスクが上がるかも」との報告もされていますね。
慎重投与対象は幾分少なめ。
抗コリン作用が怖い緑内障や高齢者。
悪性症候群を起こす可能性のある抗精神病薬
(主に統合失調症の薬)を使っている人。
精神状態が悪化する可能性のある、
脳の器質的障害や衝動性の高い併存障害のある人。
自殺念慮・企図のある人。
統合失調症の素因がある人も発症する可能性がありますね。
そして電気的変化で発作を起こし得るてんかんのある人と、
そう転が怖い双極性障害の人も慎重対象です。
大事な追加対象は「出血危険性のある人」。
皮膚・粘膜(胃腸を含む)が起こりえますので、
併用注意薬と一緒に意識しておいてください。
残念ながら、小児と妊娠・妊娠可能性のある人に対しての
安全性未確立は変わりませんね。
次回は併用注意薬から確認していきますよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20240425更新)