6 各論1:脈・血圧(心臓):不整脈・心不全(2)強心薬(2)
カテコラミン製剤の補足に入ります。
まず、交感神経系の神経伝達物質ノルアドレナリンが
心臓にあるβ1受容体にはまると、
心筋は強く収縮します。
交感神経系優位時の興奮モード
(闘争か逃走か)のときに、
全身にしっかり血液を届ける必要があるからですね。
ノルアドレナリンがβ1受容体にはまると、
第2メッセンジャーのcAMPが増えます。
ノルアドレナリン(副腎髄質ホルモン)が水溶性だから、
細胞内に情報を伝えるために必要なものでしたね。
cAMPは細胞内の特定の酵素(Gタンパクキナーゼ)を活性化。
Gタンパクキナーゼは、
エネルギーのもとリン酸を付け外しするのがお仕事です。
リン酸のくっついた細胞膜のカルシウムチャネルが開き、
細胞外から
わずかに濃いカルシウムイオンが流れ込んできます。
これで、細胞内のカルシウムイオンが増えましたね。
心筋がしっかり収縮できるようになったのです。
カテコラミン製剤の例は、
ドパミン塩酸塩(イノバン)や
ドブタミン塩酸塩(ドブトレックス)。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051960
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00001217
イノバンの禁忌は褐色細胞腫。
交感神経系の神経伝達物質
ノルアドレナリンが出すぎているところに、
同じような働きの薬を入れてしまってはいけませんね。
ドブトレックスでは閉塞性の心筋症が禁忌。
これについては
ジギタリス製剤のおはなしと同じですね。
ドブトレックスは負荷心エコーの検査時にも使われますが、
そのときには禁忌が増えますよ。
ちゃんと添付文書を確認です。
カテコラミン製剤の「カテコラミン」とは、
カテコールアミンのことです。
「カテコール」と「アミン」の部分があるのですね。
具体的には
アミノ酸のチロシンからできた「アミン」で、
ドーパミン、ノルアドレナリン、
アドレナリンを指す言葉です。
順番としてはチロシンからL-ドーパができて、
そこからドーパミンができます。
ドーパミンからノルアドレナリンができて、
そこからアドレナリンの完成です。
この流れは、
中枢と精神のところでもまた出てきますからね!
また、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬も
心筋収縮力を増やせます。
どこを邪魔しているのかというと、
カテコラミン製剤のところで出てきたcAMPが、
1回使われた後に分解する酵素を邪魔しています。
cAMPが使い捨てじゃなくなりますから…
1回ノルアドレナリンが受容体にはまれば、
「何回もβ1受容体に
ノルアドレナリンがはまった」ことと
同じような働きになりそうですね。
ここから先は、
カテコラミン製剤と同じおはなしです。
だから禁忌もカテコラミン製剤のドブトレックスと同じ
閉塞性心筋症ですよ。
【今回の内容が関係するところ】(以下20221214更新)