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6 各論1:脈・血圧(心臓):不整脈・心不全(2)強心薬(1)

2022年12月14日

心不全のおはなしに入りますよ。

心不全は心筋の収縮力が下がって、

体の細胞に必要な血液が

送り出せていない状態です。

だから心筋の収縮力

(命令が来たときに、ちゃんと縮める)を

回復・復活・増強させる薬が、

心不全の薬(強心薬)です。

 

でも、最初に注意しておかなくちゃいけないこと。

心筋の収縮力が低下した原因を

解消せずに収縮力だけを増やすと、

心筋が疲れ果ててしまい、

もっと心臓が働けなくなる可能性があります

(重度の心不全)。

だからこれらの薬は単品ではなく、

他の薬と一緒に使うことが多くなります。

他の薬と一緒ということは…

相互作用に要注意ですからね。

 

心筋収縮力を増やす薬には、

ジギタリス製剤、カテコラミン製剤があります。

 

ジギタリス製剤は

細胞膜にある2つのポンプの働きをコントロールして

細胞内のカルシウムイオンを増やすお薬。

カテコラミン製剤は

同じく細胞膜にあるノルアドレナリン受容体にはまり、

あたかもノルアドレナリンが

β1受容体にはまったような働きをするお薬です。

 

少し補足していきますね。

ポンプというのは、

ATPを利用してイオンを交換するところ。

ジギタリス製剤が邪魔するのは、

ナトリウム-カリウムポンプ(Na-Kポンプ)です。

 

ナトリウム-カリウムポンプは、

細胞内のナトリウムイオンをかき出して、

細胞外からカリウムイオンをかき入れるポンプです。

ここが邪魔されると、

細胞の中にナトリウムイオンがたまっていきます。

そうすると、

もう1つのナトリウム-カルシウムポンプ(Na-Caポンプ)は

「あまり働いちゃいけないな」と判断します。

こちらは普段は細胞内のカルシウムイオンをかき出して、

細胞の外からナトリウムイオンを取り入れるポンプ。

細胞の中にナトリウムイオンが増えてきたから

働きを少し抑えている状態ですね。

その結果、細胞内にカルシウムイオンが増えます。

カルシウムイオンが多いと

しっかり筋肉が収縮できるおはなしは、

狭心症の硝酸薬のところでしましたよ。

 

ジギタリス製剤の一例として、

ジゴキシン(ジゴシン)の禁忌を確認。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00051627

房室・洞房ブロックのある人には禁忌。

これは不整脈のところでもあった

ペースメーカー等の担当です。

心筋疾患のうち、狭窄等のある閉塞性疾患も禁忌。

狭くなっているところがあるのに、

心筋収縮力だけ高めたらもっとふさがってしまいます。

ジギタリス中毒を起こしたら、もちろん禁忌。

嘔吐、食欲不振、視界のぼやけ・知覚色変化、混乱等が

ジギタリス中毒の症状です。

ジギタリスは薬としての量と毒としての量がごく近い薬です。

何かあったら、すぐに中毒症状が出てきます。

代謝(M)や排泄(E)のことを思い出すと、

小児や腎臓障害の人では特に注意が必要です。

 

あと、併用禁止(「原則禁忌」)には

カルシウム製剤(注射剤)や

手術時の筋弛緩剤がありますよ。

 

【今回の内容が関係するところ】(以下20221214更新)