6 各論1:脈・血圧(心臓):心筋梗塞・狭心症(1)抗血栓薬(2)
血栓に対する4つの薬が、
どこに働いているかイメージできましたね。
では、これらの薬の注意点を確認していきましょう。
心筋梗塞のときに痛みが出るところは、前回確認済み。
そこに痛みが出て「心筋梗塞だ!」と分かった後に効く薬は、
4つの中ではウロキナーゼだけです。
しかも詰まってから6時間以内に詰まった現場(心臓の血管)に
薬を届けないと細胞が死んでしまいます。
とてもシビアな時間との闘いになりますね。
ウロキナーゼはできたかさぶたを溶かす薬ですから、
出血性の病気や出血性素因のある人には
「禁忌(絶対にダメ!)」です。
頭蓋内(頭の中)に出血のある人も、当然禁忌。
さらに2か月以内に頭蓋部や脊髄周辺の手術を受けた人
(や、そこに不具合が見つかった人)にも禁忌です。
血管壁に傷がついた部分をかさぶたがせっかくふさいだのに、
ウロキナーゼが効いてしまったら、
傷口が開いて血が血管外に出ていってしまいます。
あと、動静脈奇形や動脈瘤、とても重い高血圧にも禁忌ですよ。
出血と関係ないように思えますが…
血管の「つまった!」が溶けた直後がとても危険なのです。
「つまった!」が溶けると、
間に合った心筋は一斉に収縮を開始します。
あまりに広範囲の収縮が一気に再開すると、
心臓が破裂してしまう危険性があるのです。
それを持ちこたえることができても、
正常な収縮命令とは異なる不整脈が出る可能性は十分にあります。
不整脈によって急な拍出量変更があると、
奇形部や瘤、普段からぱんぱんに張り詰めた血管が耐えきれず、
大出血を起こしてしまうかもしれませんよ。
血栓溶解薬ウロキナーゼの禁忌キーワードは、
「出血」「最近の中枢部不具合」「血管異常」ですね。
残り3つの薬は、基本的に痛くならないように
(「つまった!」にならないように)使う薬ですね。
アスピリンはトロンボキサンを作らせないように邪魔をします。
…実は、トロンボキサンを作る酵素は
プロスタグランジンを作る酵素と同じシクロオキシゲナーゼ。

8 脂質代謝のおはなし(5)
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プロスタグランジンができないように邪魔をするおはなしは、
NSAIDs(消炎鎮痛剤)の「妊娠中に使えない!」でしましたね。
同じ酵素を邪魔するのですから、
アスピリンも妊娠中期以降妊婦
(出産予定12週以内)には禁忌です。
もちろん、出血中や出血傾向があったら
必要なときに血が止まらなくなってしまうので禁忌。
胃・十二指腸潰瘍等の消化性潰瘍も、
大出血につながる危険があるので禁忌です。
さらにアスピリンには過敏症とアスピリンジレンマ問題もあります。
過敏症(薬アレルギー)が結構起こりやすく、
Ⅰ型もⅣ型も起こる可能性があります。
アスピリンジレンマというのは、
体内濃度によってアスピリンが逆に血小板凝集を促進してしまうこと。
普通はそんなことが起こらないように、
ちゃんと薬の濃度(体に入れる量)は計算されているはずですが。
代謝や排泄に問題があると、
十分に起こりうるおはなしです。
だから肝臓が本気モードになっていない、
新生児や乳児にも禁忌ですからね!